ルーベンスの絵画『パエトンの墜落』を解説〜ワシントン・ナショナルギャラリーの見どころ

はじめに

今回はギリシャ神話のエピソード「パエトンの墜落」を描いたルーベンスの絵画、ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵の『パエトンノ墜落』について解説します。

ワシントン・ナショナルギャラリー
美術館というよりは役所に見えます

ルーベンスとは?

ルーベンスとは?

ピーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640)は、バロック期のフランドルの画家です。

祭壇画、肖像画、風景画、神話画や寓意画、歴史画など、様々なジャンルの絵画作品を残しました。

主な作品

『ブリジーダ・スピノラ=ドリア侯爵夫人』(1606年、ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵)
『ライオンの穴の中のダニエル』(1613年 – 1615年、ワシントンナショナルギャラリー)

『パエトンの墜落』解説

「パエトンの墜落」とは?

パエトンは太陽伸アポロンの息子。にもかかわらず、自分が太陽伸の息子であることを友人に信じてもらえず不満を感じています。

パエトンは父であるアポロンのもとへ行き、「神の子である証が欲しい」と頼みます。

『パエトンの墜落』(シモーネ・モスカ作、16世紀、ボーデ博物館)

するとアポロンは「何でも欲しいもの言え」と寛大に対応。そこでパエトンは日頃から憧れていた、父親の天を駆ける馬車を要求します。

『パエトンの墜落』(ヨハン・リス作、1624年、デニス・マーン・コレクション)

アポロンはひどく後悔をします。なぜなら火を吐く馬を操れるのは神を入れても自分だけで、息子に使いこなせないことは分かっていたからです。別の頼みに変えたらどうかとアポロンは提案しますが、パエトンは聞く耳持たず。

『パエトン』(ギュスターヴ・モロー作、1878年、ルーブル美術館所蔵)

パエトンは父から授かった馬に乗り、軽快に雲をかきわけて飛び回ります。しかし、違和感を感じた馬が暴走。それに加え、目の前に現れたさそり座に恐怖を抱いたパエトンは思わず手綱を放し、コントロールを失った凱旋車は大地という大地を焼き焦がします。

これには大地の女神も大怒り。ゼウスに救援を求めます。ゼウスは雷電をパエトンに投げつけ、パエトンは燃えながら墜落。

『パエトンの墜落』(Adolphe Pierre Sunaert作)

母親は半狂乱になって地を探し回り、息子の骨を拾い集め、姉妹達は墓の回りでいつまでも嘆き続けました。パエトンのお墓の周りにはその後、ポプラの木が生えたといわれています。

『パエトンの墜落』解説

本作は雷に撃たれたパエトンが墜落している場面を描いています。ゼウスの姿は描かれず、上方斜めからの強烈な光線によって神の雷電が示されています。ゼウスの怒りに恐れおののく周囲の女達は、いつも凱旋車に付き従う「時間」の精霊ホラ。

『パエトンの墜落』(1604-05年、ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵)
神々しさ、ダイナミックさがルーベンスの持ち味ですが、それに加えて動物画が上手いのも彼の特徴です。馬の他にもヘラクレスと取っ組み合うライオンの絵なども描いています。

右上から画面を斜めに走る金色の稲妻に呼応してらさまざまな姿形をとる人たちもまた画面斜めになだれ落ちていきます。

強烈な色彩と明暗の対比、ダイナミックさはルーベンスならではと言うことができます。

参考文献

中野京子 名画の謎

『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』(中野京子)

興味を持った方は是非読んでみて下さい!

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