『ウェリントンの勝利』解説〜作曲の背景、構成、駄作?

はじめに

今回はベートーヴェンの『ウェリントンの勝利』を解説していきます。

『ウェリントンの勝利』解説

英語名

フランスに戦争で勝ったイギリスを讃美するために作られた『ウェリントンの勝利』、英語名はWellington’s Victoryといいます。

ドイツ語だとWellingtons Siegとなります

作曲の背景

この『ウェリントンの勝利』は1813年に書かれたのですが、その当時、オーストリアはフランスと10年間も戦争を続けており、国内は経済的にも精神的にも疲弊していました。

そんな折、1813年にスペインで起きたビトリアの戦いで、ウェリントン侯爵アーサー・ウェルズリー率いるイギリス軍がフランス軍に勝利、オーストリア国民間の緊張も和らいできます。

自然とオーストリア内でウェリントンの人気が高まり、これにメルツェルという、メトロノームを開発した人物が目をつけます。

メルツェルは自身で発明した「パンハルモニコン」という楽器のために作曲を依頼するのですが、ベートーヴェンはこれを管弦楽用に作曲してしまいます。

こうして完成したのが『ウェリントンの勝利』。初演後、ベートーヴェンとメルツェルの間に著作権争いの裁判が起きましたが、ベートーヴェンが勝利しました。

構成

この曲は2つのパートで構成されていて、前半ではビトリアの戦いが、後半ではフランス軍の撤退とイギリス軍の勝利を祝う凱歌が再現されています。

駄作評価?

軍楽隊から大砲、銃、太鼓、ラッパを使用して戦争を表現した『ウェリントンの勝利』は、商業的には大成功を収めたものの、ベートーヴェンの他の作品に比べると駄作感が強いとされています。楽譜通りに演奏しようとすると火器が必要となり、演奏自体が難しいこともその評価に拍車をかけているのかもしれません。

自衛隊演奏

日本では2007年に、陸上自衛隊朝霞訓練場で陸上自衛隊東部方面音楽隊により、楽譜通り実際の火器を使用した演奏が行われました。

カラヤン

カラヤン指揮の『ウェリントンの勝利』も出ています。

参考文献

この記事は『366日の西洋音楽』(久保田慶一監修)を参考にしています。

音楽の知識がなくても気軽に学べる本となっています。興味のある方は是非。

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