能『安宅』解説〜読み方、あらすじ

はじめに

今回は能『安宅』を解説していきます。

『安宅』解説

『安宅』の読み方

「安宅」は「あたか」と読みます。

基本情報

作者

不明

曲籍

四・五番目物

囃子

大小物

上演時間

約90分

曲名

「安宅」(観世・宝生・金春・金剛・喜多)

登場人物

シテ

武蔵坊弁慶

ツレ

義経ノ郎等

子方

源義経

ワキ

富樫某

アイ

強力

アイ

従者

あらすじ

安宅の関

源頼朝と決裂した義経と弁慶は山伏に変装して都落ちをします。頼朝は義経を捕まえるため各地に関所を設け、山伏の監視を強化するように言い聞かせます。

加賀国の安宅の関守、富樫も山伏がやってきたら自分のもとに連れてくるように下人たちに命令します。

弁慶と義経登場

山伏に変装した義経一行が登場します。安宅の関の前で休憩をとっているところです。一行はどうやら関所での取り締まりが強化されていることを知ります。

力ずくで通るべきか、何とか穏便に通るべきか話し合われますが、先のことを考えて武力行使はせずに通ることに決定します。義経を強力姿に変装させることにし、準備している間に強力を偵察に出します。

偵察の結果は…

強力が偵察に行くと、関所の厳しい警備、そして、切り落とされた山伏の首を目にします。

強力は弁慶のもとに戻り報告をします。その状況を聞いた一行は驚愕しますが、意を決して関所へ向かいます。

いざ、関所へ

富樫の従者が、山伏の一行がやってきたことを報告します。弁慶たちは富樫に、自分たちは東大寺再建のために諸国を巡り勧進をしているのだと述べます。

富樫は頼朝の命令で検問を強化していると脅します。それに対して弁慶たちは、最期の勤めにと数珠を激しく揉み下ろしながら祈ります。

富樫はもし弁慶に対し、もし本当に勧進をしているのならば勧進帳を読めと命令します。それに対して弁慶は、動揺をせず、別の巻物を出して勧進帳の願文を諳んじます。

一難去ってまた一難

富樫は弁慶の迫力におされて通過を許します。しかし、強力に変装した義経に違和感を抱いた富樫の従者が、富樫に進言。

一行は覚悟を決め、戦闘態勢に入ります。

弁慶、涙の機転

弁慶は機転を利かして義経を杖で打ちます。

それを見た富樫は流石に弁慶たちに詫び、通行を許します。

「八幡菩薩のご宣託」

無事に関所を通った一行は休憩をとります。そこで、弁慶は義経に手をついて非礼を詫びます。しかし、義経は「八幡菩薩のご宣託」と言って許します。

弁慶「延年の舞」

舞台は再び安宅の関。富樫は先程の非礼を詫びるために酒を渡そうと、下人とともに弁慶たちの後を追うことにします。

弁慶たちのもとに富樫とその従者がやってきました。弁慶は一同に油断をしないようにと言い聞かせながらも、富樫を招き入れ、酒を酌み交わします。

「延年の舞(鎌倉時代頃から寺社の法会の後に僧侶が余興として演じていた芸能)」の花形として知られた弁慶。勇壮な舞を見せ、再び旅に出ます。

参考文献

この記事は『これで眠くならない!能の名曲60選』(中村雅之著)を参考にしています。

観劇の前の予習にはもちろん、能を教養として知っておきたいけど敷居が高いと感じる方にも最初の一冊にオススメです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です