エドゥアール・マネの『オランピア』を解説

はじめに

今回はオルセー美術館所蔵、エドゥアール・マネの『オランピア』について解説していきます。

マネとは?

マネとは?

エドゥアール・マネ(Édouard Manet 1832~1882)は、19世紀のフランスの画家です。

聖書や神話などの「架空の世界」を「三次元」で「もっともらしく」描く従来の絵画とは異なり、「現代生活」を題材に「絵画の二次元性を追究」したことで知られています。

マネの作品の特徴

彼の絵画の特徴は「リアルさ」を追求している点です

ここで言う「リアルさ」とは「絵を写真の様に正確に描く」というより、「人々の生活をリアルに描く」という意味です。

聖書や神話といった高尚と見なされていたものよりも、娼婦や疎遠な人間関係など、当時のパリで顕在化しつつあった社会問題などを主なモチーフとしていました。

遠近感を廃し、コントラストの強い色を平面に用い輪郭線を強調する技法など、日本の版画の影響が見られるのも特徴の一つです

『笛を吹く少年』(オルセー美術館所蔵)
単純で平坦な背景処理はベラスケスの影響だと言われています。奥行を排した二次元的で明るい画面は当時としては斬新でした。

『オランピア』解説

解説

黒人の召使や首のチョーカー、サンダルなどが描き込まれ、娼婦をしめす名である「オランピア」をタイトルに冠したこの作品。

『オランピア』(1863, オルセー美術館所蔵)
ティッツィアーノやゴヤの裸体画から受け継がれてきた西欧の様々なヴィーナス像の延長線上にある本作品。
神話や文学的な口実をはぎ取られた娼婦の絵は当時の美術界に強烈な拒否反応を巻き起こしました。

この女性が、当時裸体を描くことが許されていた女神でないどころか、首に結ばれた黒のひも飾り、届けられた花束、裸体に付けられた腕輪、脱げかかったサンダルなどから、娼婦であることは誰の目にも明らかであり、また裸体を平坦な色面で描いたことで「草上の昼食」の時以上のスキャンダルとなり酷評に晒されました。

しかし、本作の明快な色調と大胆な主題は、のちの印象主義を形成する当時の若い画家に大きな影響を与えたと言われています

『草上の昼食』(1863年,オルセー美術館所蔵)

『オランピア』とルーブル美術館

『オランピア』はサロンに展示されたとき、怒った観衆から作品を守るために絵の前に守衛を立たせていたとの逸話が残るほどの問題作だったと言われています。

しかし、1889年、マネの死後に国外流出の危機に晒された本作品を、印象派の画家モネが国家財産にするように訴えます

モネの奮闘が身を結び、翌年に『オランピア』が国家に寄贈されることが決定。当時近代美術館だったリュクサンブール美術館に入ります。さらに1907年には、時の首相クレマンソーの主張により、ルーブル美術館に移管され、新古典主義の巨匠アングル(1780~1867)の『グランド・オダリスク』(1814年,ルーブル美術館所蔵)の隣に並べられることになりました。

『グランド・オダリスク』(1814年,ルーブル美術館所蔵)

※『オランピア』は現在はオルセー美術館所蔵です

参考文献

画家大友義博

『一生に一度は見たい西洋絵画 BEST100』(大友義博)

美術に苦手意識がある人はこの本から読みましょう。

『美術館の舞台裏』の著者高橋明也

『もっと知りたい マネ 生涯と作品』(高橋明也)

マネという画家、そしてその周辺の人々についてもっと詳しく知りたくなった方は読んでみて下さい。

西洋美術史の木村泰司

『印象派という革命』(木村泰司)

印象派の画家達について解説。交流関係など、ストーリー性があって読みやすいです。

オルセー美術館展 図録

『オルセー美術館展 図録』 2014年

2014年に開かれたオルセー美術館展の図録。もっと詳しく知りたい方は手に取ってみて下さい。