百人一首No.12『天つ風雲の通ひ路吹き閉ぢよ』解説〜意味・現代語訳、品詞分解・修辞法

はじめに

今回は百人一首のNo.12『天つ風雲の通ひ路吹き閉ぢよをとめの姿しばしとどめむ』を解説していきます。

『天つ風雲の通ひ路吹き閉ぢよをとめの姿しばしとどめむ』解説

作者は?

作者は僧正遍昭(816〜890)。

俗名は良岑宗貞で六歌仙の一人です。実は桓武天皇の孫。

桓武天皇

仕えていた仁明天皇の崩御を機に出家し、その後、高僧として活躍しました。

意味・現代語訳は?

『天つ風雲の通ひ路吹き閉ぢよをとめの姿しばしとどめむ』の意味・現代語訳は以下のようになります。

「空吹く風よ、雲の通い路を閉ざしておくれ。天女の舞い姿をしばらくこの地上にとどめておこう」

品詞分解・修辞法は?

①天つ風

天…名詞

つ…格助詞

風…名詞

②雲の通ひ路

雲…名詞

の…格助詞

通ひ路…名詞

③吹き閉ぢよ(句切れ)

吹き閉ぢよ…ダ行上二段活用の命令形、ここまでで三句切れ

④をとめの姿(見立て)

をとめ…名詞

の…格助詞

姿…名詞

「をとめ」とは、「天つ乙女」の意味で、天女のこと。五節の舞姫を天女に見立てた表現です。

⑤しばしとどめむ

しばし…副詞

とどめ…マ行下二段活用の未然形

む…意思の助動詞の終止形

五節の舞とは?

五節の舞とは、毎年十一月の新嘗祭に宮中で行われた少女たちの舞いのことです。公卿や国司の家の未婚の娘が四・五人選ばれて舞姫となり、それぞれの家々では競って華美をきわめるので、その姿はたいへん美しいものであったと言われています。

五節の舞には天武天皇が吉野へ行幸した際、天女が天上から降りてきて舞ったという伝説もえり、当時はそれが五節の舞の起源とされていました。そんな伝説も今回の歌の背景となっています。

参考文献

この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。

百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。