百人一首No.3『あしびきの山鳥の尾のしだり尾の』解説〜作者、意味、品詞分解、序詞などの修辞技法

はじめに

今回は百人一首のNo.3『あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む』を解説していきます。

『あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む』解説

作者は?

作者は柿本人麻呂。

菊池容斉画

持統天皇や文武天皇に仕えた宮廷歌人とされていますが詳細は不明。枕詞、序詞などの修辞技法を駆使した雄大な長歌、短歌を残しています。

奈良県天理市の石神神宮にある柿本人麻呂の歌碑

万葉時代最大の歌人とされ、後世には「歌聖」と称されました。

奈良県宇陀市の人麻呂公園にある像
日本文化の神的存在なんですよね
狩野探幽画
後世の多くの画家達のモチーフにもなっているのが彼の偉大さを伺わせます

意味は?

『あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む』の意味は以下のようになります。

「山鳥の尾の、その垂れ下がった尾が長々しいように、秋の長々しい夜をひとりで寝ることになるのだろうか」

何とも切なく虚しいやりきれない歌ですね。

品詞分解はと修辞技法

①あしびきの(枕詞)

あしびき…名詞

の…格助詞

「あしびき」は「山」にかかる枕詞(特定の語句の前に置いて語調を整える言葉。決まった前降りみたいなものです)。

②山鳥の尾の

山鳥…名詞

の…格助詞

尾…名詞

の…格助詞

山鳥はキジ科の鳥で、昼は雄雌一緒にいるのに夜は谷を隔てて別々に寝るとされており、一人寝の悲哀を表す歌の言葉となりました。

③しだり尾の(序詞)

しだり尾…名詞

の…格助詞

「しだり尾」は長く垂れ下がっている尾のこと。

最初の「あしびきの」から「しだり尾の」までが次の「ながながし」にかかる序詞となります。

④ながながし夜を(掛詞)

ながながし…形容詞のシク活用

夜…名詞

を…格助詞

「ながながし」がしだり尾の長さと夜の長さの両方にかかる掛詞となっています。

⑤ひとりかも寝む

ひとり…名詞

か…係助詞、係り結びで一番下の「む」が連体形となっています。

も…係助詞

寝…ナ行下二段活用の未然形

む…推量の助動詞の連体形

「ひとりで寝ることになるのだろうか」という自らに問いかける形となっています。個人的にはこのような表現にすることによって、現実を半ば受け入れながら呆然とした哀れな感じがよく表現されていると思います。

歌川国芳画
画面には山鳥がいます。歌の着想を得た場面を描いているのでしょうか。

参考文献

この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。

百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。