百人一首No74『憂かりける人を初瀬の山おろしよ』解説〜作者、意味、品詞分解、擬人法

はじめに

今回は百人一首No74『憂かりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを』を解説していきます。

『憂かりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを』

作者は?

この歌の作者は源俊頼朝臣(みなもとのとしよりあそん)(1055?〜1129?)。

院政期歌壇の中心人物で、清新な歌風で後世にも影響を与えました。勅撰集『金葉集』の撰者で、歌学書『俊頼髄脳』を著しました。

意味・現代語訳は?

『憂かりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを』の意味・現代語訳は以下のようになります。

「私がつらく思ったあの人を、なびくようにと初瀬の観音に祈りこそしたが、初瀬の山おろしよ、はげしくあれとは祈りはしなかった」

つれない相手の心がなびくようにと祈ったのに、相手はより一層冷たくあたるようになってしまったという嘆きの歌です。

山おろしとは山から吹きおろす冷たく激しい風。映画の劇的なワンシーンが頭に浮かんできそうです。

品詞分解は?

①憂かりける

憂かり…形容詞ク活用の連用形

ける…過去の助動詞の連体形

②人を初瀬の

人…名詞

を…格助詞

初瀬…固有名詞、大和国の地名、現在の奈良県にある長谷寺は現世利益の観音信仰の霊場として知られていました。

③山おろしよ

山おろし…名詞、山から吹きおろす冷たく激しい風

よ…間投助詞

④はげしかれとは

はげしかれ…形容詞シク活用の命令形

と…格助詞

は…係助詞

⑤祈らぬものを

祈ら…ラ行四段活用の未然形

ぬ…打消の助動詞の連体形

ものを…逆接の接続助詞

擬人法は?

この歌では、「山おろし」を擬人化して呼びかける表現が用いられています。

参考文献

この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。

百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。