ミレーの『落穂拾い』を解説~光と「影」

はじめに

今回はジャン=フランソワ・ミレーの『落穂拾い』を解説していきます。

オルセー美術館

『落穂拾い』解説

『落穂拾い』(ミレー、1857年、オルセー美術館所蔵)
題名からして痛々しい作品
夕日が差しており明暗の対比が美しいですが題材は確かに重々しい
「見るのがつらい」絵画が増えてくるのが19世紀

収穫後の田畑に散らばる稲穂や穀物の落穂を拾い集める、貧しい野良着姿の農婦を描いた作品です。

遠景には積みわらと地主と小作人たちによる豊かな収穫の様子。その賑やかさに対比して描かれるのはこぼれた落穂を拾って生活するさらに貧しい者たちです。

題材が「貧しく貧困を強調している」といった批判を受けることもありましたが、労働の過酷さを写実に徹して表現した点や、明るい朝の太陽に照らされた美しい色彩による描写が批判を覆すほどの賞賛を得て「晩鐘」に並ぶ代表的農民画となりました。

『晩鐘』(ミレー、1857-59年、オルセー美術館所蔵)

ミレーの絵は光の表現など美しいのですが、どこかしら影を感じさせるものが多いです。

『仕事に出かける人』(ミレー、1851-53年、シンシナティ美術館所蔵)
朝早く仕事に出かける人々。表情は暗い
『死と木こり』(ミレー、1858年、ニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館所蔵)

参考文献

この記事は以下の本、文献を参考にしています。

『一生に一度は見たい西洋絵画 BEST100』(大友義博)

有名な絵画について簡単な解説を加えていく雑誌。気軽に読めます。