ニューヨーク近代美術館所蔵ゴッホの『星月夜』について解説~命を吹き込む

はじめに

今回はニューヨーク近代美術館所蔵、ゴッホの『星月夜』を解説していきます。

ニューヨーク近代美術館、Wikipediaより引用

『星月夜』解説

意味

この作品をめぐっては、描かれている星の数を「ヨハネの黙示録」や「創世記」の一節などに照らして、ゴッホの宗教的ビジョンを表現したものだとする説や、プラネタリウムによる再現検証により、月と金星の位置がほぼ正確に描かれていることから、星の位置にこだわった実写だという説など、その解釈はさまざまあります。

『星月夜』(ゴッホ、1889年、ニューヨーク近代美術館)
「ゴォォォ」という空が渦巻く音が聞こえてきそうです。そうは言っても不安や恐怖を感じさせるような雰囲気はなく、どちらかというと温かみのある幻想風景、ファンタジー系の絵本のような世界観です。トトロにも近いかもしれません。自分の耳を切り落とすなど奇行が知られているゴッホですが、この絵からは子供が想像するような純粋さを感じます。

ただ、ゴッホ滞在していたサン=レミの病院のアトリエはこれらの星が見える東向きではなく、この絵に描かれている教会も同じ形のものはありません。糸杉や遠景の山並みは、それぞれ別の絵に描かれているものと酷似していることから、ゴッホは写生に徹したというよりは、架空のものも含めて数々のモチーフを組み合わせて構成し、自らの内面世界を表現したと言えそうです

満天の星や月が輝く夜空はミレーの『星の夜』やフリードリヒの『月を眺める男女』などで描かれており、ゴッホは特にミレーの作品に影響を受けていたと推測されています。しかし、ミレーの絵が静寂な夜空として表現されているのに対し、ゴッホの絵は独特の激しいタッチで、まるで生き物がうごめいているかのように描かれているのが注目点です

『星の夜』(ミレー、1850-65年、イェール大学美術館)
こちらはうってかわって静謐な画面。プラネタリウムみたいですね。虫の鳴き声が聞こえて来そう。
『月を眺める男女』(フリードリヒ、1830-35年、ベルリン旧国立美術館)
「崇高さ」という言葉が良く似合うフリードリヒ。ヨーロッパの画家には珍しく山や海の絵を多く描いており、日本人にも親しみやすいのが特徴。哀愁も感じさせます。

参考文献

『西洋美術101鑑賞ガイドブック』(神林恒道、新関伸也編)

非常に読みやすい本なので、興味を持った方は読んでみて下さい。