黒田精輝の『湖畔』を解説~淡さの美

はじめに

今回は黒田清輝の『湖畔』を解説していきます。

黒田清輝

『湖畔』解説

読み方は?

湖畔(こはん)と読みます。

どこ?

舞台は避暑地で有名な箱根の芦ノ湖です

解説

明治30年(1897)8月、黒田は後に夫人となる女性とこの地を訪れ、この絵の創作を始めます。当時、黒田の家族に結婚を反対され、不安に揺れていた彼女の表情が映し出されているかのような絵です

『湖畔』(黒田清輝、1897年、東京国立文化財研究所)
豊かな自然、浴衣、団扇と日本的な美を感じる要素が散りばめられています。彼女の顔に浮かんでいる憂愁というか黄昏なようなものもノスタルジーを感じさせます。

着物姿の美人画というのは江戸時代から浮世絵の定番となっていましたが、どちらかというとお洒落な姿が描かれることが多かったのに対し、本作では飾らない女性が描かれています

『山城国 井手の玉川』歌川国芳
『見返り美人』(菱川師宣)

また、肌のうえの微妙な陰影が青緑や紫を混ぜて表され、しっとりと輝いている点も、陰影を描写するために下地を暗くしたり黒を混ぜた絵の具を塗っていた明治初期の油絵と異なる点です

『湖畔』が描かれた翌年、黒田は東京美術学校西洋画科教授となりました。このころ多くの習作を描き、画面の構想を練って『智・感・情』や『昔語り』の制作が進められていきます。

みぎから『智・感・情』(黒田清輝、1898年)
『昔語り』(黒田清輝、1896年、黒田記念館)

参考文献

『日本美術101鑑賞ガイドブック』

この記事は『日本美術101鑑賞ガイドブック』(神林恒道 新関伸也編)を参考にしています。


 

日本美術に興味を持って方は気軽に読んでみて下さい。

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