ジェロームの『ローマの奴隷市場』を解説~群がる男達

はじめに

今回はエルミタージュ美術館所蔵、ジャン=レオン・ジェロームの『ローマの奴隷市場』を解説します。

『ローマの奴隷市場』解説

美術史を通してヌード画というのは多数描かれてきましたが、この絵は「裸の女性を多数の男性がのぞき込む」という点で、それまでのヌードがとは一線を画しています。

このような手法をとることにより、鑑賞者にはその場に居合わせたような臨場感、見てはいけないものを見てしまったという背徳感、そして今までにはなかった興奮を感じさせることができます。

『ローマの奴隷市場』(ジャン=レオン・ジェローム、1884年、エルミタージュ美術館)

ジェロームを含め、19世紀の新古典主義の画家たちは特に男性の性的願望をいかに刺激するかということを念頭にヌードを描きました。

画家の教養を感じさせるのが舞台上にたっている女性のポーズです。この片足に重心をかけて内股で立ち、右手で顔を隠すポーズは「恥じらいのポーズ」と呼ばれ、ヴィーナスを描いた作品でよく見られるポーズです。

守破離ではないですが、新たな表現や技法に挑戦しつつも古典というものを踏まえているんですね。

ジェロームはこの作品のほかにも「女性が多数の男性に見られる」構図を多く描いております。なんとも官能的で背徳感を感じさせます。

『奴隷市場』(ジェローム、1866年、クラーク美術館)
『アレオパゴス会議のフリュネ』(ジェローム、1861年、ハンブルク美術館)

参考文献

本記事は『1日1ページで世界の名画が分かる366日の西洋美術』(瀧澤秀保 監修)を参考にしています


 

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