歌川広重の東海道五十三次No.3『川崎 六郷渡舟』を解説~六郷の渡し、広重視点の特徴

はじめに

今回は歌川広重の東海道五十三次No.3『川崎 六郷渡舟』を解説していきます。

『川崎 六郷渡舟』解説

六郷の渡し

現在の東京都と神奈川県の県境で、多摩川を船で渡す「六郷の渡し」の風景です。遠くに富士山が見えるのは品川の方向から川崎を望んでいるから。

渡し船の上では人々が談笑したり煙草をすったりしています。広重の時代にはここに橋がかかっていなかったので川を越えるには船にのる必要があったんですね。画面奥では赤い着物の男が船賃を払っています。

現在の川崎の六郷橋

広重視点の特徴

この図の大きな特徴は風景をほぼ水平にとらえていることです。

江戸時代に多く出版された名所図絵(絵入りの名所案内)では、高い視点から見下ろした風景を描くのが一般的でした。

鶴見橋 江戸名所絵

その一方で、広重は多くの図で視点をかなり低く取り、実際に風景を眺めたときの感覚を再現しています。このような視点を用いることで実際に我々がそこに居合わせているという臨場感を味わえるようになっているんですね。

1860年代の六郷渡し

参考文献

この記事は『謎解き浮世絵叢書 歌川広重 保永堂版 東海道五拾三次』(町田市市立国際版画美術館監修 佐々木守俊解説)を参考にしています。

広重、東海道五十三次に興味ある方は是非。旅をしている気分になれますよ。