ミレーの『種をまく人』を解説~ミレーの出世作

はじめに

今回はボストン美術館所蔵、ジャン=フランソワ・ミレーの『種をまく人』を解説します。

『種をまく人』解説

『種をまく人』はミレーの出世作ともいえる作品です。

『種をまく人』(ミレー、1850年、ボストン美術館)

ミレーは1850年のサロンにこの『種をまく人』を出品し、名声を得ました。

ミレーというと本作のように農民の生活を描いた画家として知られており、「農民画家」とも呼ばれていたのですが、実はそのアイデンティティを確立するまでは苦労をしてきた人物でもあります。

ミレーはもともとは生活が非常に苦しく、有名になる前は女性のヌード画や男女のまぐわいを描いた絵画などを作成することで糊口を凌いでいた画家でした。

『横たわる裸婦』(ミレー、1844-45年、オルセー美術館所蔵)

そんな彼に転機が訪れたのが34歳のときです。ある画廊の前で、自身が「裸の女の尻や胸ばかり描いている画家」と評価されていることを知ります。

そんな自分の評価に衝撃を受けた彼は、ヌードがを描くことをやめ、その年のサロンで初めて農民画を出品します。これが『箕をふるう人』と『刈入れ人たちの休息』です。

『箕をふるう人』(ミレー、1847-48年ごろ、ロンドン、ナショナルギャラリー)
『刈り入れ人たちの休息』(ミレー、1848年、オルセー美術館)

その後、1849年に家族とともにバルビゾン村に移住し、1850年に出品した『種をまく人』で名声を得ることとなりました。

そういった意味では、この『種をまく人』という作品は、ミレーの自分らしさ、アイデンティティを確立するに至った一枚とも言うことができるかもしれません。

参考文献

本記事は『1日1ページで世界の名画が分かる366日の西洋美術』(瀧澤秀保 監修)を参考にしています

 

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