ミレーの『晩鐘』を解説〜響き渡る鐘の音

はじめに

今回はオルセー美術館所蔵、ジャン=フランソワ・ミレーの『晩鐘』を解説します。

ミレーの写真
男気溢れるダンディ

『晩鐘』解説

『晩鐘』解説

舞台はフランスの小さな農村。夕暮れ時、教会の鐘の音に合わせて1日の労働を終えた農民夫婦が死者へ祈りを捧げています。

『晩鐘』(ミレー、1857-59年、オルセー美術館所蔵)
BGMはなし。鐘の音だけが響き渡ります。ずっとこのまま目をつむっていたい。個人的にも好きな絵の一枚です。キリスト教徒ではなくても敬虔な気持ちになります。

遠くに見えるのは教会で周辺は豊かな麦畑。前景は痩せた土地で収穫はジャガイモのみ。夫婦が貧しい農民であることが分かります。この敬虔な農民の主題はミレーの幼き日の記憶のからのもので、黄昏の広漠たる畑における貧しい者の祈りの情景は、画家ミレーの手で厳粛な宗教画へと昇華されています。

絵の主人公は?

この絵のタイトルは『晩鐘』であり、描かれているのは鐘の音です。しかし、これはあくまで「絵」であり音は描けないはず。にもかかわらず確かに画面に響き渡る教会の鐘の音が聞こえてきます。これはどういうことでしょうか。

それはおそらく画面中に満ちている「光」が原因であると考えられます

まず、遠くのものは青く、近くのものは赤いという色彩の遠近法が使われていて、それが大地の広がりを感じさせます。それゆえ、遠くにある教会からの晩鐘が画面全体に広がっているのではないでしょうか。この絵の主人公は「光」です

参考文献

この記事は以下の本、文献を参考にしています。

『一生に一度は見たい西洋絵画 BEST100』(大友義博)

有名な絵画について簡単な解説を加えていく雑誌。気軽に読めます。

『パリの美術館で美を学ぶ ルーブルから南仏まで』(布施英利)

パリの美術館にさる作品を中心に美術史を解説。旅行に行く人は読んでおきましょう。