高橋由一の『鮭』を説明~技法など

はじめに

今回は東京藝術大学大学美術館所蔵、、高橋由一の『鮭』を解説していきます。

東京藝術大学大学美術館、Wikipediaより引用

『鮭』解説

所蔵先の美術館は?

「はじめに」でも述べましたが、『鮭』は東京藝術大学大学美術館に所蔵されています。2019年9月4日(水)現在では、「丸山応挙から近代京都画壇へ」展が開催されています。

描写

半身を切り取られた鮭が藁縄で壁に吊るされています。江戸時代からお歳暮に使われ、今でも正月向け商品として人気の高い新巻鮭を描いた油絵です

浮世絵など二次元的な絵画が多く、写実的な表現が少なかった日本美術界。しかも、この絵が描かれた当時は写真がまだ貴重で、白黒の小さなものしかできない時代。モチーフは誰もが知っている「鮭」ですが、その質感、リアルさはさぞ人々を驚かせたことでしょう

技法

『鮭』(高橋由一、1877年、東京藝術大学大学美術館所蔵)
鮭をここまでカッコよく描いた画家がいたでしょうか。魚独特の見開かれた目つきに迫力を感じます。ゴッホは農民の靴に威厳を持たせて描いていますが、普段は意識しない日常的な事物の中にある美しさに気づかせてくれるのも芸術の魅力の一つです。

鮭の真ん中の切り身はつややかで、油が乗っておいしそうに見えます。この部分の油絵は薄く、あっさりと塗られています。地塗りされていない洋紙に淡い朱色で調子がつけられ、その上に筋や骨が描かれ、一部に白色を混ぜた朱色が摺りこむように塗られているだけです。半透明の油絵具の重なりが効果的に用いられています。

一方、縄や鮭の頭、皮は乾いた感じがし、これらは油絵特有の粘り気を生かした厚塗りで、最後に細かく描かれたうろこも、上手くなじんで緻密な絵肌をつくっています

高橋由一とは?

『鮭』を描いたのは高橋由一。幕末から明治初期に鉛筆画や水彩画、油絵などの西洋技法を日本に根付かせようとした先駆者です。

高橋由一

代表作は『鮭』の他に『花魁』や『豆腐』など

『花魁』

『花魁』(高橋由一、1872年、東京藝術大学)

『豆腐』

『豆腐』(高橋由一、1876-77年頃、金刀比羅宮)
豆腐をここまでかっこよく描いた画家は他にいたでしょうか(以下同)

参考文献

『日本美術101鑑賞ガイドブック』

この記事は『日本美術101鑑賞ガイドブック』(神林恒道 新関伸也編)を参考にしています。


 

 

日本美術に興味ある人は是非。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です