はじめに
今回は百人一首のNo85、『夜もすがらもの思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり』の解説していきます。
『夜もすがらもの思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり』解説
作者は?
この歌の作者は俊恵法師(1113〜1191?)。
自宅を「歌林苑」と名付け、藤原の清輔(No84)などを集め、歌合や歌会を開催しました。鴨長明の和歌の師であるなど、カリスマ性を感じさせる人物です。
意味は?
『夜もすがらもの思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり』の意味は以下のようになります。
「一晩中もの思いに沈んでいるこのごろは、夜がなかなか明けきれないで、つれない人ばかりか、寝室のすき間までがつれなく思われるのだった」
何かに悩んで寝れないとき(この歌では恋に)、部屋のすき間さえつれなく思えてくる。
メンタルがやられているときには自分の目に映るあらゆるものが自分の敵に見えてきます。そんなやりきれない、惨めな気分が垣間見える一句です。
品詞分解は?
①夜もすがら
夜もすがら…副詞、「一晩中」の意味です
②もの思ふころは
もの思ふ…ハ行四段活用の連体形
ころ…名詞
は…係助詞
③明けやらで
明けやら…ラ行四段活用の未然形、「〜やる」は「すっかり〜し終える」という意味
で…接続助詞
④閨のひまさへ
閨…名詞、「寝室」の意味
の…格助詞
ひま…名詞
さへ…副助詞
⑤つれなかりけり
つれなかり…形容詞ク活用の連用形
けり…詠嘆の助動詞の終止形
参考文献
この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。
百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。