目次
はじめに
今回は百人一首No.97『来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ』を解説していきます。
『来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ』 解説
作者は?
作者は権中納言定家、藤原定家(1162~1241)です。百人一首の撰者であり、『新古今集』の撰者でもあります。
定家は藤原俊成の子で、俊成の「幽玄」を深化させ、「有心体(うしんたい、妖艶な余情美)」を理想としました。
意味・現代語訳は?
『来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ』 の意味・現代語訳は以下のようになります。
「いくら待っても来ない人を待ち続け、松帆の浦の夕なぎのころに焼く藻塩のように、私の身もずっと恋にこがれていることだ」
百人一首の撰者が一体どんな歌を詠むのかと思っていたら、なんともパッションに溢れる歌ではありませんか。
下手をすると暑苦しくなりそうな情景ですが、絶妙なラインコントロールによって、上品で洗練された「暑さ」を保っています。
品詞分解は(修辞法)?
①来ぬ人を
来…カ行変格活用の未然形
ぬ…打消しの助動詞の連体形
人…名詞
を…格助詞
②まつほの浦の(掛詞)
まつほの浦…「待つ」と「松帆の浦」の掛詞。松帆の浦とは淡路島の最北端
の…格助詞
③夕なぎに
夕なぎ…名詞。夕方風がやみ波が穏やかに静まった状態
に…格助詞
④焼くや藻塩の(序詞)(縁語)
焼く…カ行四段活用の連体形
や…間投助詞
藻塩…名詞
の…格助詞
「まつほの浦に」から「焼くや藻塩の」までが、次の「こがれ」を導き出す序詞。
「焼く」「藻塩」と下の「こがれ」は縁語です。
⑤身もこがれつつ(縁語)
身…名詞
も…係助詞
こがれ…ラ行下二段活用の連用形
つつ…接続助詞
先ほども述べましたが、「こがれ」と、上の「焼く」「藻塩」は縁語です。
参考文献
この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。
百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。