百人一首No.7『天野原ふりさけ見れば春日なる』解説〜作者、意味・現代語訳、背景、感想

はじめに

今回は百人一首のNo7『天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも』を解説していきます。

『天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも』解説

作者は?

この歌の作者は安倍仲麿(あべのなかまろ)(698〜770)。

遣唐留学生として渡唐。長年玄宗皇帝に仕え、唐の代表的詩人である李白・王維らとも親交がありました。

李白
王維

帰国を試みましたが船が難破し断念。そのまま唐土で没しました。

読み方は?

この歌の読み方は、「あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも」となります。

意味・現代語訳は?

『天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも』の意味は以下のようになります。

「大空をふり仰いではるか遠くを眺てみると、今私が見ている月というのは、かつて奈良の春日の三笠山の上に出ていた月と同じ月なのだなあ」

背景

『古今集』には、中国での長年の留学生活を終えて帰国する、その惜別の折に月が美しくのぼったのを見て詠んだとあります。

この歌を詠んだ時点で、阿倍仲麻麿は遣唐留学生として17歳で入唐してからすでに30年の歳月が流れていました。

いよいよ帰国という時に詠まれたこの歌には、異国との友との別れがたい思いにも勝り、故郷への思いがあらためてこみあがっているのが感じられます。

西安の興慶宮公園には友好都市記念として阿倍仲麻麿記念碑があります

品詞分解は?

①天の原

天の原…名詞、大空のこと。

②ふりさけ見れば

ふりさけ見れ…マ行上一段活用の已然形、「遠くを眺めやる」の意味

ば…接続助詞

③春日なる

春日…固有名詞、現在の奈良公園から春日神社のあたり

なる…存在の助動詞の連体形

④三笠の山に

三笠の山…固有名詞

に…格助詞

⑤出でし月かも

出で…ダ行下二段活用の連用形

し…過去の助動詞の連体形

月…名詞

かも…終助詞

感想

転校、留学、転勤など、故郷を離れて別の地に移り住むことは何かとあり、住む場所が変わると文化や習慣も変わり、新鮮であると同時に少し寂しい感じもします。

そんな中でも変わらないのは、故郷からも見えていた月の姿。趣もありつつ、さらには余裕を感じさせる歌です。ただ、この歌詠んだ後の仲麿の運命を知るとあまりにも悲劇的で切ない感じがしますね。

参考文献

この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。

百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。

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