能『土蜘蛛』解説〜「土蜘蛛」とは?あらすじ

はじめに

今回は能『土蜘蛛』を解説していきます。

『土蜘蛛』解説

基本情報

作者

不明

曲籍

五番目物

囃子

太鼓物

上演時間

約50分

曲名

「土蜘蛛」(観世・金剛・喜多)

「土蜘」(宝生・金春)

「土蜘蛛」とは?

タイトルにもなっている「土蜘蛛」とは一体何者なのでしょうか?

かつて、大和朝廷は統一国家を作り上げる過程で土着の人々を力で征服していきました。これらの人々は強い武力を持って抵抗し、恐れられていました。

恐れ、そして差別的な意味を込めて彼らは「土蜘蛛」や「鬼」と呼ばれるようになったのです。

「土蜘蛛伝説」の成立

その後に、渡辺綱、坂田公時、碓井貞光、卜部季武ら「頼光四天王」を従えた平安時代の武将・源頼光の武勇伝説が結びつき出来上がったのが「土蜘蛛伝説」です。

頼光と四天王

今回紹介する能の『土蜘蛛』は、『日本書紀』や『平家物語』などに見られる「土蜘蛛伝説」を下敷きにして作られています。

登場人物

前シテ

後シテ

土蜘蛛ノ精

ツレ

源頼光

ツレ

胡蝶、頼光の侍女てます

トモ

頼光ノ従者

ワキ

独武者

ワキツレ(三人)

従者

アイ

独武者ノ下人

あらすじ

病の頼光

頼光は重い病気で伏せっており、侍女の胡蝶が薬を渡します。すっかりと弱気になっている頼光を胡蝶が慰めています。

現れる謎の僧

夜が更けます。

頼光が一人で寝ていると、いつの間にか部屋の片隅に不気味な僧がいます。

僧は頼光の名を呼び、訝っている頼光に蜘蛛の糸を投げつけます。

頼光が起き上がり太刀で切りつけると、僧は叫び声。上げながら消えていきました。

声を聞きつけた家臣たちがやってきます。頼光は起こったことを語り、家臣たちは僧が残した血痕を頼りに退治に向かいます。

正体を現す土蜘蛛

僧の後を追って山に入ってきた頼光の家臣たちは葛城山に怪しい塚を見つけます。塚を崩すと恐ろしげな土蜘蛛の精が現れました。世を乱すために頼光に近づいたと語ります。

対決

蜘蛛の糸を投げて抵抗する土蜘蛛の精に頼光の家臣たちは太刀を抜いて応戦します。

激闘の末、頼光の家臣たちは土蜘蛛の精の首を打ち取り、意気揚々と引き上げていきました。

参考文献

この記事は『これで眠くならない!能の名曲60選』(中村雅之著)を参考にしています。

観劇の前の予習にはもちろん、能を教養として知っておきたいけど敷居が高いと感じる方にも最初の一冊にオススメです。

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