はじめに
今回は百人一首No69『嵐吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり』を解説していきます下さい
『嵐吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり』解説
作者 能因法師
能因法師とは?
この歌の作者は能因法師(のういんほうし)、俗名は橘永愷(たちばなのながやす)といいます。
文章生でしたが二十六歳ごろに出家しました。歌枕に異様なまでの関心を抱き、各地を旅して歌を多く詠みました。著書には『能因歌枕』があります。
人となり・逸話
能因法師は、数寄者(すきしゃ)といい、ある事を好みそれに打ち込む人、そして和歌に異様な執念を燃やす人だったと言われています。
『都をば霞とともに立ちしかど秋風ぞ吹く白川の関』は奥州への旅先での一作と言われていますが、一説には、都で創り、陸奥へ行くと偽って家に閉じこもり、肌を黒くした後、披露に及んだとも伝えられています。
現代語訳・意味は?
『嵐吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり』の現代語訳・意味は以下のようになります。
「嵐の吹きおろす三室の山のもみじ葉は、竜田の川の錦なのだった」
見立ての技法
「錦」とは、数種の色糸で模様を織り出した厚地の織物のこと。嵐に吹き散らされた三室山の色とりどりの紅葉が、竜田川に浮かんで流れているけしきを「錦」に見立てた表現になっています。何とも粋ですね。
品詞分解は?
①嵐吹く
嵐…名詞
吹く…カ行四段活用の連体形
②三室の山の
三室の山…固有名詞
の…格助詞
③もみぢ葉は
もみぢ葉…名詞
は…係助詞
④竜田の川の
竜田の川…固有名詞
の…格助詞
⑤錦なりけり
錦…名詞
なり…断定の助動詞の連用形
けり…詠嘆の助動詞の終止形
参考文献
この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。
百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。