ジョヴァンニ・ベッリーニの作品、『好機』を解説~アカデミア美術館所蔵

はじめに

今回はジョヴァンニ・ベッリーニの作品『好機』を解説していきます。イタリアフィレンツェのアカデミア美術館に所蔵されています。

ベッリーニとは?

自画像(ベッリーニ、カピトリーノ美術館)

ジョヴァンニ・ベッリーニ(1430頃~1516)とは、ヴェネツィア派の基礎を作ったイタリア・ルネッサンスの画家。ティッツァーノを育てた人物でもあります。偉大。ティッツァーノについてはこちらも参照ください↓

『好機』解説

当時の画家はタイトルを付けなかったためこの絵は「運命」「好機」「ネメシス」と呼ばれています(ネメシスはギリシャ神話における復讐の女神、身に余るほどの幸運を得たものに身の程を知らせるという役割を担っています)。

『好機』(ジョヴァンニ・ベッリーニ、1490年代、アカデミア美術館)

名画ながらいろいろと突っ込みどころがあり面白いです。「運命」と思われる半身半獣の生物が目隠しをして球体の上に立っています髪の毛も逆立っています。文字にしてみると中々インパクトが強い笑

ただ、これらの物にも意味があると言われています。例えば、目隠しして球体に立つのは、「不安定さ」を表していると言われています。何も見えていない、足元がフラフラするため誰に何が訪れるか分からい運命の気まぐれが表現されていると考えられます。

ちなみに、この運命が球体に立つというのは伝統的図像。ベッリーニから十年ほど経てデューラーも同じスタイルで作品を作成しています。

髪の毛が豪快に上げてあるのは掴みやすくするため。毛髪は生命力のシンボルであり、チャンスは逃すな、ということですね

翼は人間界からの超越を意味していると言われています。ひとたび飛び去ってしまえばもう手遅れ、手の届かない存在になってしまうということでしょうか。

手に持っている水差しはいわゆるご褒美。乗っているのは玉の上。こぼさないように注意。

幸運は逃すなという戒めはイタリア・ルネサンスの時代から続いてきた人類普遍のものなんですね。絵を通してはるか昔の人々と通して繋がれるというのは嬉しいものです

『ネメシス』(デューラー、1501年頃、リーズ市立美術館)
デューラーの絵の細密描写には毎度のことながら狂気を感じます。

参考文献

この記事は『中野京子と読み解く 運命の絵』(中野京子 2017 文藝春秋)を参考にしています。

興味を持った方は是非。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です