ルーブル美術館所蔵、ラ・トゥールの『いかさま師』を解説

はじめに

今回はルーブル美術館所蔵、ラ・トゥールの『いかさま師』を解説していきます。

ルーブル美術館

ラ・トゥールとは?

ジョルジュ・ラ・トゥール(1593~1652)はフランスの画家。ルイ13世に召し抱えられ「王の画家」という称号ももらったほどだったのですが、再発見されたのは20世紀初頭になってから(平面的で明暗のはっきりした画法が華やかなルイ14世の時代になると飽きられたしまった、と言われています)。

『聖ヨセフ』(ラ・トゥール、1642または1645年、ルーブル美術館)
ルーブル美術館で実物を見てきたのですがとても綺麗でした。ろうそくのホッとするような温かさというのがよく表現されている気がします

後年はかなりの財産家として暮らしながら、その一方で暴力をふるって貸し金を取り立てたり、召使に盗みをさせたとして訴訟沙汰になったりと、嫌われ者だったと言われています

そのような良くも悪くもお金にこだわり生きてきた経験が今回紹介する『いかさま師』にも反映されていると言うことができるかもしれません

『女占い師』(ラ・トゥール、1630年、メトロポリタン美術館)
目線で行われる駆け引きを描くのが得意

『いかさま師』解説

背景が真っ黒過ぎるため、演劇が行われている舞台の一場面のような本作。賭けトランプをする三人の男女と一人の給仕女が描かれています

まず右から二番目の真っ白な卵型の顔をした女性から見ていきましょう。彼女の目に注目。いやらしい目つきでなにやら合図しています。そして、良く見るとその隣の二人、給仕女と左端の男も目が怪しい。左端の男に限っては左手にカードを隠しています。

『いかさま師』(ラ・トゥール、1647年頃、ルーブル美術館)
背景が真っ黒なせいで舞台上で行われている演劇の一場面を見ているかの様です。「いやらしい」という言葉がよく似合う目つきです。

タイトルにもある通り、賭けの際にいかさまが行われている場面を描いた作品。左の三人がグルなのでしょう。よく見ると一番右の男の前にコインが多めにあるのも芸が細かい。最初の方は勝たせておいていい気にさせる、何も気づいていないように見える少年は今から嵌められるところなのでしょう

コインの話で言うと、右端の男、机に肘を置いています。これは自分の持ち金を隠すためのテクニック。この男の髪は外巻きのカールと若ぶっていますが額の皺から年齢を重ねていることが分かります。相手をおだてるのが上手い男と言ったところでしょうか

彼が我々鑑賞者に見せているのはおそらく一番強いカードとなるダイヤのエース。給仕が右端の少年の手札を盗み見て、それを真ん中の女に告げ、女が目くばせをするという算段

ただ、我々も多かれ少なかれ日常生活においてこのような場面に遭遇したことがあるのではないでしょうか。そんな元体験を形にできるラ・トゥールにも天晴れです。

参考文献

この記事は『怖い絵』(中野京子)を参考にしています。

興味を持った方は是非。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です