はじめに
今回は百人一首のNo.13『筑波嶺の峰より落つる男女川恋ぞつもりて淵となりぬる』の読み方、意味、序詞、作者を解説していきます。
『筑波嶺の峰より落つる男女川恋ぞつもりて淵となりぬる』
作者は?
この歌の作者は陽成院(ようぜいいん、868~949)。
第五十七代天皇で、清和天皇の皇子。母は『伊勢物語』にも登場する二条の后、藤原高子(たかいこ)。
「筑波嶺の」読み方は?
「筑波嶺」は「つくばね」と読み、筑波山のことです。筑波山は山頂が男体山(なんたいさん)と女体山(にょたいさん)の二つに分かれていることで知られています。
ちなみに、筑波山では古代には歌垣といって、春と秋に男女が集まって神を祭る行事が行われていたそうです。
またちなみになのですが、「男女川」は「みなのがわ」と読み、男体山と女体山の二つの峰から流れ出ているのでこう名付けられています。
意味は?
この歌の意味は、「筑波の峰から激しく流れ落ちてくる男女川がしだいに水量を増やして深い淵となるように、私の恋心も積もりに積もって淵のように深くなってしまった」という意味になります。
序詞は?
序詞(じょことば)とは、一語、または一句だけを修飾するために、論理的には本旨とは無関係に、音やイメージの連想から置かれる言葉です。
本旨に関係のある一語か一句のイメージをより豊かにするために比喩や例えが置かれていると考えてもらえれば大丈夫です。
この歌では「恋心が積もって淵のように深くなった」というのが本旨なわけですが、その「淵」のイメージをより豊かにするために、前半の「筑波嶺の峰より落つる男女川」という「淵」に関係ある言葉を前置きというか比喩として置いています。
参考文献
この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。
百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。