目次
はじめに
今回は百人一首のNo.89『玉の緒よ絶えねば絶えぬながらへば忍ぶることのよわりもぞする』を解説していきます。
『玉の緒よ絶えねば絶えぬながらへば忍ぶることのよわりもぞする』解説
作者は?
作者は式子内親王(1149〜1201)。新古今和歌集の代表的女流歌人です。
後白河天皇の皇女で、賀茂神社の斎院を勤めました。
藤原定家と恋仲にあったとされ、後世には謡曲の題材にもなっています。
意味・現代語訳は?
『玉の緒よ絶えねば絶えぬながらへば忍ぶることのよわりもぞする』の意味・現代語訳は以下のようになります。
「わが命よ、絶えてしまうのならば絶えてしまえ。このまま生きながらえているのならば、堪えしのぶ心が弱ると困るから」
心情は?
忍ぶ恋ゆえの張りつめた思いが一首を貫いています。
初句で自らの命に呼びかけ、続く二句では忍ぶ恋の切なさから「絶えてしまうのなら絶えてしまえ」と命令形ではげしく訴えかけています。
しかし、「ながらへば」から流れが一転、強気な姿勢から心の中に秘めきれず他人に気づかれてしまうかもしれないという、不安におののく心細く繊細な心情が表現されています。
品詞分解(句切れ、縁語)
①玉の緒よ(縁語)
玉の緒…名詞、本来は玉を貫いた緒(ひも)の意味であるが、ここでは魂を身体につないでおく緒の意味。命そのものです。下の「絶え」「ながられ」「よわり」は「緒」の縁語
よ…間投助詞
②絶えなば絶えね(句切れ)
絶え…ヤ行下二段活用の連用形
な…完了の助動詞の未然形
ば…接続助詞
絶え…ヤ行下二段活用の連用形
ね…完了の助動詞の命令形
ここまでで二句切れ
③ながらへば
ながらへ…ハ行下二段の未然形
ば…接続助詞
④忍ぶることの
忍ぶる…バ行上二段活用の連体形
こと…名詞
の…格助詞
⑤よわりもぞする
よわり…ラ行四段活用の連用形
も…係助詞
ぞ…係助詞
する.,.サ行変格活用の連体形、「ぞ」を受けて連体形になっています
参考文献
この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。
百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。
≪…他の人に洩れ知られるかもしれない…≫と、
≪…あなたを思い慕う熱い気持ちが薄れていってしまう…≫とで、
この歌の本歌取りで、円周率(π)と[1]の関係を〇△▢の出逢いを詠っているようだ・・・
数の緒よ絶えなば絶えねながらえば数えることのよわりもぞする
「情緒と創造」岡潔著にこの歌が出てくる
数の言葉ヒフミヨ(1234)が、平安な時代にこそ存在感がありそう・・・
【 〇△▢からできているのが数(自然数)に洩れ知られるかもしれない 】
【 1を思い慕う円相(π)が薄れていってしまう 】