フリードリヒの『ブナの森の修道院』を解説~ベルリン旧国立美術館所蔵

はじめに

今回はベルリン旧国立美術館所蔵、カスパー・ダーヴィッド・フリードリヒの『ブナの森の修道院』を解説していきます。

フリードリヒとは?

カスパー・ダーヴィッド・フリードリヒ(1774~1840)とはドイツ・ロマン派を代表する画家です

『フリードリヒの肖像画』(Karl Bähr、1836年、ノイエ・マイスター絵画館)

幼い頃から家族をなくす不幸に見舞われたためか、生涯に少なくとも3回重い抑うつ状態に陥ったことが知られています。特に、川でスケートをしているときに氷が割れ、落ちたフリードリヒを助けようとして飛び込んだ弟のほうが亡くなってしまったエピソードは悲劇的なことで有名です。

うつ病患者が描く絵に共通して現れると言われている荒涼たる風景、遠方の高い山、枯れた樹木、雪や氷、墓地、黒い鳥などのモチーフがフリードリヒの絵にも頻繁に登場します。空間が果てしなく広く、シメントリ―が強調されるのも特徴。

『テッチェンの祭壇画』(フリードリヒ、1808年、ノイエ・マイスター絵画館)
『氷海』(フリードリヒ、1823-24年、ハンブルク美術館)

『ブナの森の修道院』解説

1806年、抑鬱状態にあったフリードリヒは自殺を企てますが、症状が落ち着いてくると創作の面でも変化が現れます。それまでは単色のセピアインクや水彩絵具、版画で制作していたのが本格的に油彩に力を入れ始めます

1810年に発表された『ブナの森の修道院』は彼の出世作となります

『ブナの森の修道院』(フリードリヒ、1809-10年、ベルリン旧国立美術館)

画面中央にあるのは三十年戦争で廃墟となったエルデナ修道院がモデルとなっていると言われています。聖堂上部は夕日の残照に照らされていますが、もうすぐに暗くなることが想像できます

画面右下には斜めに傾いた十字架があり、そのその背後や画面左下にも薄暗い闇の中に墓標が見受けられます。画面中央下部には大きな穴。周りには修道僧たち。メランコリックな死の匂いがプンプンするではありませんか。

この作品はベルリン美術アカデミー展で発表され即座にプロイセン王室に買い上げられました。なぜこんな暗い雰囲気な絵が買われたのかというと、ドイツは当時内部が分裂状態、王侯貴族はフランス語を読み書きするという始末。周囲からは文化水準の低い田舎扱い。そんな未来の見えない国の情勢が彼の作風とマッチしたのではと考えられています

参考文献

この記事は『新 怖い絵』(中野京子 2017)を参考にしています。

興味がある方は是非。