ジャン・ブロック『ヒュアキントスの死』を解説〜サントクロワ美術館の見どころ

はじめに

今回は、サントクロワ美術館所蔵、ジャン・ブロックの『ヒュアキントスの死』について解説していきます。

ジャン・ブロックとは?

ジャン・ブロックとは?

ジャン・ブロック(1771〜1850)は、新古典派の巨匠ダヴィッドの工房の一員。本作のみで名を残したと言えます。

『ヒュアキントスの死』解説

アポロンとヒュアキントス

アポロンとは、太陽神でオリュンポス十二神の一人です。その肉体は男性美の理想とされ、通常、髭のない繊細な顔立ちを持つ裸体の青年として描かれます。

性別に拘らずほれっぽいアポロンはスパルタ王の息子、ヒュアキントスに恋をします。

ある日の夕暮れ時、彼らは野原で円盤投げに興じ、アポロンが遠くへ軽々と黄金の輪を投げるとヒュアキントスは自分の番が待ちきれずすぐさま後を追って走り出します。

ところが円盤は地面に当たってはねかえり、ヒュアキントスの顔面を直撃(嫉妬した西風ゼフュロフの仕業?)。致命傷となり命を失います。

嘆き悲しむアポロンの前で、ヒュアキントスの首は百合の花の様に下を向きます。やがて彼の血で染まった大地からは百合に似た形の濃い紅色の花、ヒヤシンスが咲きそめました。

以来、スパルタでは春にヒヤシンスの祭りが盛大に催されるようになります。

『ヒュアキントスの死』解説

アポロンもヒュアキントスもまだ少年期の滑らかな肌としなやかなラインを持つ、美少女のように描かれています。ヒュアキントスは息絶えようとしているというよりは、絶頂の弛緩状態のように見えます。

アポロンが背に負った矢は太陽光線の象徴でもあり、彼のアトリビュートでもあります。赤いスカーフがたなびいているのはゼフィロスの存在を暗示するためだと考えられます。ヒュアキントスの足元ではヒヤシンスが赤くなっているのも画家の工夫です。

エロティックな絵ですが、彼方に青く霞む山や森、広々とした野原での誰はばかることなきふたりきりの裸体での遊び…。達者な筆で神話に忠実に描かれた、ロマンティックな絵であることは確かです。

参考文献

中野京子 名画の謎

『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』(中野京子)

興味を持った方は是非読んでみて下さい!