リール市立美術館所蔵、ドラクロワの『怒れるメディア』を解説~激おこお母さん

はじめに

今回はリール市立美術館所蔵、ドラクロワの『怒れるメディア』を解説していきます。

リール市立美術館、Wikipediaより引用

ドラクロワとは?

ウジェーヌ・ドラクロワ(1798~1863)は強烈な色彩と激しい筆致が特徴のフランスの画家です

ロマン主義の旗手としても知られ、ゴーギャンは彼を「野獣」と呼び、「あの素晴らしい絵は、野獣の本能が描かせるのだ」と絶賛しています

『怒れるメディア』解説

メディアとは?

メディアはコルキスの王女

『メディア』(スキャボーネ、16世紀、ルーブル美術館)

ギリシャの英雄イアソンがアルゴー船を率い、小アジアのコルキスへ金羊毛皮を奪いに行きます。コルキス側は侵略者と戦いますが、王女であるメディアはイアソンに恋し、魔術を使って彼の命を救うばかりか祖国、王である父を裏切り、イアソンとともにギリシャへきて彼の内縁の妻となります

『メディア』(サンディーズ、1866-68年頃、バーミンガム美術館)

二人の間に子供がふたりできたところでイアソンはメディアに飽きてきます。その上、クレオン王の娘から惚れられたイアソン、出世の近道とばかりにメディアに対して別れを切り出します。その上、クレオン王も権力を振りかざしてメディアに国外退去するように圧力をかけます。

『イアソンとメディア』(モロー、1865年、オルセー美術館)

理不尽な扱いに怒りが頂点に達したメディア、彼女の復讐が始まります。別れの記念と称してクレオン王の娘に衣装と王冠をプレゼント。しかしそこには猛毒が仕込んであり、王冠からは火が噴き出し父娘ともに死にゆく人となりました。

『メディアとこどもたち』(クラッグマン、1868年、ナンシー美術館)

そして仕上げは自分とイアソンの間に生まれた子供。二人を連れてメディアは森の中へと駆け込みます。それを追いかけるイアソン。

『メディア』(ジェンティレスキ、1620年、個人蔵)
子どもの顔で笑ってしまう

最後までメディアは葛藤します。しかし、怒りが勝り、結局は子供を殺害、メディアは有翼の龍が引く車に乗って子の亡骸をイアソンに見せつけながら彼方へと飛び去って行きました…

『子を殺し、戦車に載って逃げていくメディア』(アモーレス、1887年、プラド美術館)

『怒れるメディア』解説

本作はイアソン到着前のメディアの姿

洞窟のような場所にいるメディアは子供たちを乱暴に掴んでおり、さらに特徴的な血走った目からも狂気に走っていることが分かります

『怒れるメディア』(ドラクロワ、1838年、リール市立美術館)

背景が黒いのと色彩が極力抑えられているおかげで肌の白さと衣服の赤が一層映えています。闇があるから光が際立つといったところで今のメディアには日の光が眩しいことでしょう。

ふたりの子どもはどうでしょうか。金髪の巻き毛の子はお母さんの手が苦しそう、黒髪の子はこちらをジッとにらんでいます。そんな余裕はないはずなのにそのように感じてしまう。いじめられっ子と目が合ったかのような感覚。「助けてよ」という声が聞こえて来そうです。

「復讐はだめだよ」なんてきれいごとを振り切り我が道を突き進んだメディア、何千年前に書かれた物語なのにも関わらず、根源的な欲望を描いた作品というのは文学であれ絵画であれ時代を超えて人々をも惹きつけてやみません。

参考文献

この記事は『怖い絵3』(中野京子)を参考にしています。

興味を持った方は是非。