カラヴァッジョの『洗礼者ヨハネの斬首』を解説~相変わらずのサイコパスサロメ

はじめに

今回は聖ヨハネ准司教座聖堂にあるカラヴァッジョの『洗礼者ヨハネの斬首』を解説していきます。

聖ヨハネ准司教座聖堂、Wikipediaより引用
聖堂内部、Wikipediaより引用

カラヴァッジョとは?

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571~1610)はイタリア人の画家です

劇的な画風で今日では日本での認知度も高いですが、彼が生きていた当時では作風が暴力的で野卑すぎるとの批判もあったそうで、再評価は20世紀になってからとも言われています

『愛の勝利』(カラヴァッジョ、1601年、ベルリン絵画館)
明暗の対比は美しいですが表情は下品と言えば下品

『洗礼者ヨハネの斬首』解説

聖書のエピソードをモチーフにした本作。イエスに洗礼を施した預言者ヨハネは、ヘロデ王が兄の妻と結婚したことを痛烈に批判し逮捕されます。ヘロデは宴会の席で妃の連れ子であるサロメによるダンスに感嘆し、欲しいものを挙げると約束。そこでサロメが欲したのはヨハネの首―

たいていはヨハネの生首を持ったサロメが絵となるのですが、カラヴァッジョはヨハネの首が切られる瞬間を描いています

『洗礼者ヨハネの斬首』(カラヴァッジョ、1608年、聖ヨハネ准司教座聖堂)

地下牢とおぼしき場所。画面右の真四角の鉄格子窓からは二人の囚人が処刑をのぞいています。処刑人はヨハネの髪を乱暴に掴み、今まさに彼の首を切り取ろうとしています

面白いのは外面左、金盥(かなだらい)を持ってサロメがヨハネの首を載せる準備をしています。サロメの乳母とおぼしき老女が「ああ、おぞましい」といった表情で頬に手を当てているのは対称的です。カラヴァッジョに限らずイタリアの画家にはユーモア精神が脈々と流れている気がするのは私だけでしょうか。

全体の色調が黒く抑えられているため、ヨハネの身体にかけられた布の赤さが目立ちます。これはこれからあふれ出るであろう彼の血を暗示しているのでしょうか…

ビアズリーの描いたサロメとヨハネ、オスカーワイルドの『サロメ』の挿絵
『出現』(モロー、1876年、オルセー美術館)

参考文献

この記事は『新 怖い絵』(中野京子 2017)を参考にしています。

興味がある方は是非。