はじめに
今回は東京国立博物館などに所蔵してある、『婦女人相十品 ポッピンを吹く娘』について解説していきます。

『婦女人相十品 ポッピンを吹く娘』解説
読み方は?
婦女人相十品(ふじょにんそうじっぽん)と読みます。
誰が描いたの?
喜多川歌麿(きたがわうたまろ)という浮世絵師です。
代表作には今回紹介する作品の他に『寛政三美人』などがあります。

「美人」の定義が時代とともに変わるは有名ですが、この絵の女性たちはどうでしょうか。胸元は緩いものの今で言うセクシーさみたいなものは感じられず、どちらかというと打ち解けやすそうです。
解説
紅の市松模様に桜花を散らした華やかな振り袖をまとった若い娘がポッピンを口にして振り返っています。ポッピンとは当時流行していたピードロ(ガラス製)の玩具で、末広がりの管の先端の薄い膜が吹くたびにポコンポコンという軽い音を出すものです。

これぞ江戸時代といったところでしょうか。少し姉御肌っぽい。顔のシンプルさと着物の細密描写の対比が際立ちます。
娘の姿勢、端正にまとめられた髪型、振り袖の柔らかな曲線が画面にリズムを作り出すとともに、全体として調和がとれています。背景には光沢のある雲母摺りが贅沢にほどこされ、着物の色と模様は華やかですが、華美にならない品格を備えています。
歌麿は自身の鋭い観察眼で目や口元に表れる微かな表情の変化を逃さず、日常生活で女性が見せるちょっとした振る舞いや仕草の持つ意味を把握して、自身のレパートリーを豊かにしていきました。

飾っていない何気ない動作に美が宿るという視点はドガとかぶるかもしれません。
参考文献
『日本美術101鑑賞ガイドブック』
この記事は『日本美術101鑑賞ガイドブック』(神林恒道 新関伸也編)を参考にしています。
日本美術に興味あるものの何から読んだらよいか分からない人におススメです。