はじめに
今回はニューヨーク近代美術館所蔵、ゴッホの『星月夜』を解説していきます。
『星月夜』解説
意味
この作品をめぐっては、描かれている星の数を「ヨハネの黙示録」や「創世記」の一節などに照らして、ゴッホの宗教的ビジョンを表現したものだとする説や、プラネタリウムによる再現検証により、月と金星の位置がほぼ正確に描かれていることから、星の位置にこだわった実写だという説など、その解釈はさまざまあります。
ただ、ゴッホ滞在していたサン=レミの病院のアトリエはこれらの星が見える東向きではなく、この絵に描かれている教会も同じ形のものはありません。糸杉や遠景の山並みは、それぞれ別の絵に描かれているものと酷似していることから、ゴッホは写生に徹したというよりは、架空のものも含めて数々のモチーフを組み合わせて構成し、自らの内面世界を表現したと言えそうです。
満天の星や月が輝く夜空はミレーの『星の夜』やフリードリヒの『月を眺める男女』などで描かれており、ゴッホは特にミレーの作品に影響を受けていたと推測されています。しかし、ミレーの絵が静寂な夜空として表現されているのに対し、ゴッホの絵は独特の激しいタッチで、まるで生き物がうごめいているかのように描かれているのが注目点です。
参考文献
『西洋美術101鑑賞ガイドブック』(神林恒道、新関伸也編)
非常に読みやすい本なので、興味を持った方は読んでみて下さい。