はじめに
今回はウォルターズ美術館所蔵、ジェロームの『カエサルの死』について解説します。
参考文献
この記事は『名画で読み解く世界史』(祝田秀全監修)を参考にしています。
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『カエサルの死』解説
反カエサル・共和派の暗殺計画
紀元前44年にローマの終身独裁官となったカエサル。ローマ史上かつてないほどの栄誉と権力が一人の人物に集中します。
これに対し、建国以来受け継がれてきた共和制を重視する共和派がカエサルに反感と焦燥を募らせていき、暗殺を決定します。
暗殺決行
紀元前44年3月、ポンペイウス劇場で元老院会議が開かれます。不吉な夢を見た妻カルプルニアはカエサルに元老院に出ないよう忠告しますが、敵対行為に寛容であろうとしていたカエサルはこれを聞き入れません(たとえ証拠があっても焼き捨てていたほど)。
かくして議場に入ったカエサルは暗殺者たちによってたくみに護衛のアントニウスらと引き離され、ブルートゥスを含む反カエサル派にめった刺しにされました。
「倅よ、お前もか」
そんな中、我が子同然に親しくしていたブルートゥスの姿を認めたカエサルが最後に放った一言が、「倅よ、お前もか」。
『カエサルの死』解説
カエサルの暗殺場面を描いた絵画は、ギリシア人伝記作家のブルタコスや、帝政ローマの歴史家スエトニウスによる記述をもとに描かれています。
ジェロームの本作品では、23ヵ所も刺されながら死に際に服で体を包むなど、ローマ人としての対面を守りつつ倒れたカエサルと、沸き返る暗殺者の対比が印象的に描かれています。
一団のなかのひとり、ブルートゥスは、カエサルが武官として身近におき、目をかけてきた人物。ブルートゥスに対してカエサルは『倅よ、お前もか』と叫んだという逸話が有名ですが、ブルートゥスは、本当にカエサルの子であったとも言われています。
ポンペイウスとの再開
画面手前左に描かれているのがカエサルの死体。実はカエサル、ある人物の石像の足元で息絶えたといわれています。その人物とは彼がルビコン川を渡って追い落とした政敵ポンペイウス(以下の記事を参照↓)。
カエサルは死の間際に何を思ったのでしょうか。