はじめに
今回はマウリッツハイス美術館所蔵、ピーテル・クラースの『ヴァニタス』を解説していきます。
『ヴァニタス』解説
「ヴァニタス」とはラテン語で「儚さ」や「虚しさ」を表す言葉です。
この絵が描かれた当時のオランダは、風景画や風俗画が確立された黄金時代。そんな時代に、静物画のジャンルが一分野として独立し、人間の生活に関わりの深い事物が自由に配置して描かれました。
しかし、ただ漫然と事物が描かれていたわけではありません。
当時のオランダでは宗教画が衰退していたこともあり、静物に宗教的教訓が仮託されました。
ピーテル・クラースは画中に骸骨や砂時計など死や時間を暗示するものを描くことで、世俗的な幸せは時とともに失われてしまうものということを表現したと考えられます。
「ヴァニタス」は、この作品のように骸骨や砂時計で表されたほか、虫食いのリンゴや欠けたグラスなど、みずみずしい果物ののような「生」を感じさせるものと対比する形でも表現されることもありました。特にセザンヌの『頭蓋骨のある静物画』は骸骨とリンゴを並べ、不気味な雰囲気を醸し出すことに成功しています。
参考文献
本記事は『1日1ページで世界の名画が分かる366日の西洋美術』(瀧澤秀保 監修)を参考にしています
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