ヒエロニムス・ボス『快楽の園』を解説~プラド美術館所蔵

はじめに

今回はプラド美術館所蔵、ヒエロ二ムス・ボスの『快楽の園』を解説していきます。

ボスの肖像画

『快楽の園』、モチーフと意味

左側パネル

向って左側のパネルにはエデンの園が描かれており、画面下部では神様がイヴの手を取ってアダムに引き合わせています。これは人間が淫欲にかられて堕落していく予兆で、大きな野獣が小動物を食べている描写は、楽園の崩壊を意味しているようにも見えます

『快楽の園』(ボス、1500-05年、プラド美術館)
中央パネルなんかドラゴンボール『復活のF』でフリーザーがいた地獄の様な雰囲気じゃありませんか?

中央パネル

中央のパネルにはあからさまな性行為こそ描かれていないものの、それを暗示するような行為―例えば、上部中央の小さな池では女性だけが水浴し、その周囲をさまざまな動物にまたがった男たちが堂々巡りの行進をしている―そしてこれは果てしない性的欲望の象徴的表現だと考えられる―が見受けられます

しかも、無数の男女が入り乱れるこの画面には子供の姿が見当たらず、これは暗示されている性行為が快楽のためだけにあるということを意味しているかのようです

『快楽の園』という後世につけられた題名は、この中央パネルのイメージからきています

右側パネル

向って右側パネルでは地獄の光景が描かれ、現世で快楽におぼれた人間たちが罰せられています

画面左下部では人間がリュートに縛り付けられたり、ハープの弦にくし刺しにされたりしています。恐ろしい描写の一方で、その右側で鳥の頭をしたサタンが人間が人間を飲み込みながら排泄をしていたり、右下で豚の修道女が人間にキスをしようとしていたりと、どこかしらユーモラスを感じさせる描写もあります

ちなみに、中央の頭にバグパイプという楽器を載せ、枯れ木の両足に舟を履いている通称「木男」の顔は、ボスの自画像と言われています

参考文献

『西洋美術101鑑賞ガイドブック』(神林恒道、新関伸也編)

非常に読みやすい本なので、興味を持った方は読んでみて下さい。