ギュスターヴ・モローの『出現』を解説~サロメの絵画・あらすじ

はじめに

今回はギュスターヴ・モロー美術館所蔵、モローの『出現』を解説していきます。

ギュスターヴ・モロー美術館、Wikipediaより引用

『出現』解説

モチーフは?

『出現』のモチーフとなっているのは、新約聖書の洗礼者ヨハネとへロディアの娘、サロメのエピソードです。

ヨハネとは?

ヨハネとは洗礼者のことで、人々から絶大な信頼を得ていました

『洗礼者ヨハネ』(レオナルド・ダ・ヴィンチ、1513-16年、ルーブル美術館)

しかし、ヨハネは弟の妻であるへロディアを強引に妻としていたヘロデをユダヤ法に違反するとして公然と批判したため、投獄されてしまいます。

ヘロデはヨハネを監獄につなぎとめながらも、人々から絶大な人気を得ており尚且つヘロデ自身もも聖人と捉えているヨハネを殺すことが出来ず、扱いに困ってしまいました

しかし、強引に娶られたはずのへロディアは違いました。彼女はヨハネを強く憎んでおり、ヨハネを亡き者にしたいと考えていたのです。そしてその機会はヘロデの誕生日を祝う宴で訪れます。

サロメのダンス

宴席でへロディアの娘でありヘロデの継娘でもあるサロメが魅惑的に踊ると、大喝采を浴びます。そこでヘロデはサロメに、「褒美として望むものは何でも言いなさい」と告げます。

『サロメ』(フランツ・フォン・シュトック、1906年、レーン・バッハ・ハウス)

何を望めばいいか分からない娘に対し、相談をうけた母へロディアはヨハネの首を望むように言います。

『サロメ』(ルーカス・クラーナハ、1531年、Wadsworth Atheneum)

娘の要求にヘロデは困惑しましたが、人々の面前で約束してしまった以上断れません。ヨハネの首をはねることとなってしまいました

『洗礼者の首を持つサロメ』(カラヴァッジョ、1605年、ロンドン・ナショナルギャラリー)

『出現』解説

サロメは絵画において男を惑わせる魔性の女として描かれていました。特に1870年代はフローベルの小説やマラルメの詩が契機となり空前のサロメブームを迎えていたと言われています。

『出現』(ギュスターヴ・モロー、ギュスターヴ・モロー美術館、17874-76年頃)

モローは流行を踏まえつつ、聖書の中の登場人物としてのサロメではなく、サロメに代表される女性の本性、女性という魅力的な「性」を駆使して男を屈服させ、どんな願いもかなえてしまう魔性性を描いたとされています

空中に浮かんでいるのはヨハネの首で、断首の表現は男性が持つ去勢恐怖を美的に表す意図があるとも言われています

参考文献

この記事は『名画で読み解く 「聖書」』(大島力監修)を参考にしています。

「聖書に興味はあるけど取っ付きずらい…」という方には、絵と一緒にストーリーを概観できるのでおススメです。