はじめに
今回はルーブル美術館所蔵、ダヴィッドの『ナポレオンの戴冠式』について解説します。
『ナポレオンの戴冠式』解説
皇帝の座へ
1802年に終身統領となったナポレオンは、1804年の国民投票でついに皇帝の座に登ります。その戴冠式の様子を描いたのがダヴィッドの『ナポレオンの戴冠式』です。
2階席から母后レティツィアが見守るなか、跪く皇后ジョゼフィーヌの王冠を掲げるナポレオン。右端てまえでは外務大臣のタレーランが冷笑を浮かべ、2階席にはダヴィッド自身が描かれています。
事実と大きく異なる点は、実は母后がいなかったこと。ナポレオンの弟リシュアンの扱いに同情して出席していませんでした。こういった状況のなかで作品はナポレオンの威厳を表す豪華な作品に仕上げられています。
屈辱の一枚
ジョゼフィーヌに下賜される冠を掲げるナポレオンは、習作においては自らに戴冠する姿で描かれていました。この行為は実際に行われたものであり、教皇の権威を否定するものです。ナポレオンの背後にいる教皇ピウス7世は穏やかな表情を見せてはいますが、実際にははらわたが煮えくり返る思いであったことが推測されます。
演出家ダヴィッド
『ナポレオンの戴冠式』を描いたのは、新古典主義の画風で名高いジャック=ルイ・ダヴィッド。
ナポレオンはダヴィッドを首席画家として多くの肖像画を描かせました。
しかし、どの肖像画もあまりに本人にくらべて立派に描かれ過ぎていると言われており、ダヴィッドも「肖像画が本人と似ている必要はない」ときっぱり言い切っています。
参考文献
この記事は『名画で読み解く世界史』(祝田秀全監修)を参考にしています。
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