はじめに
今回はクロザティエ美術館所蔵、リオネル=ノエル・ロイエの『カエサルの足元に武器を投げるウェルキンゲトリクス』について解説していきます。
参考文献
この記事は『名画で読み解く世界史』を参考にしています。
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『カエサルの足元に武器を投げるウェルキンゲトリクス』解説
カエサルの台頭
紀元前146年にカルタゴを滅ぼし、続いてマケドニアを属州化したローマ。前1世紀にはポンペイウス、クラッスス、カエサルによる三頭政治が始まり、この中でもポンペイウスの後押しを受けて台頭したカエサルが、武功と莫大な資産を手に入れるため前58年からガリア遠征を敢行します。
“英雄”ウェルキンゲトリクス
ガリアとは現在のフランス、オランダ、ベルギー、ドイツ西部に当たる地域で、部族ごとに割拠してまとまらずに暮らしていたため、カエサルは前53年までにガリアの征服の大部分を終えてしまいます。
しかし、そこに立ちふさがったのがウェルキンゲトリクス。諸部族を糾合し、反撃を開始します。
カエサルvsウェルキンゲトリクス
カエサルはゲルゴヴィアの戦いで大敗を喫するなど苦戦を強いられますが、態勢を立て直すとウェルキンゲトリクスをアレシアへと追い詰めることに成功。城壁、櫓などを配した総長28キロに及ぶ壁でアレシアをぐるりと取り囲みます。
ウェルキンゲトリスクは包囲網の突破に失敗して降伏し、のちに処刑されました。
ウェルキンゲトリクスの投降場面を描いたフランスの画家ロイエの作品で、ブルタルコスの『カエサル伝』をの記述を典拠としています。
アレシアへの援軍をローマに撃破され、包囲網の突破にも失敗して万策つきたウェルキンゲトリクスは降伏を決意。ガリアの英雄がカエサルに投降する場面です。
月桂冠を戴く画面右のカエサルの前に、白馬に乗るウェルキンゲトリクスが進み出て、カエサルの足下に武具を投げ出しています。
絵画が描かれた19世紀当時、フランスはナショナルズが高まる時代にあり、ガリアの自由と独立のために戦ったウェルキンゲトリクスがフランス人の祖先であるガリアの英雄として注目される時代でした。