レンブラントの『ダナエ』を解説〜エルミタージュ美術館の見どころ

はじめに

今回はエルミタージュ美術館の見どころ、レンブラントの『ダナエ』について解説します。

エルミタージュ美術館、Wikipediaより引用

レンブラントとは?

レンブラントとは?

レンブラント・ファン・レイン(1606〜1669)は、神話画、歴史画、肖像画など膨大な作品を残したオランダを代表する画家です。

『聖ステバノの殉教』(1625年、リヨン美術館所蔵)
『妻サスキア・ファン・アイレンブルフの肖像』(1635年、ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵)

代表作

レンブラントの代表作はなんといってもアムステルダム国立美術館に所蔵してある『夜警』です。

↓こちらの記事で取り扱っておりますので合わせてご覧下さい。

http://gemeinwohl.jp/2019/05/03/%e3%82%a2%e3%83%a0%e3%82%b9%e3%83%86%e3%83%ab%e3%83%80%e3%83%a0%e5%9b%bd%e7%ab%8b%e7%be%8e%e8%a1%93%e9%a4%a8%e3%81%ae%e4%bd%9c%e5%93%81%e8%a7%a3%e8%aa%ac%ef%bd%9e%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%83%96%e3%83%a9/

『ダナエ』解説

ダナエとは?

ダナエとは、ギリシャ・ローマ神話に登場する、アルゴス王アクリシオスの一人娘。

ダナエーと降り注ぐ黄金のしずく、ルーブル美術館所蔵

彼女が結婚適齢期を迎えた頃父王が神託を求めたところ、「ダナエの産む男児がお前を殺す」と告げられます。

アクリシオス王は青銅の塔を建て、細い通気孔があるだけの密封れた部屋に見張りをつけてダナエを閉じ込めます。

『ダナエ』(ティッツァーノ、1553-54年、プラド美術館所蔵)

しかし、ダナエの美貌というのは神をも魅了するものであり、ゼウスも例外ではありませんでした。

ゼウスは黄金の雨に姿を変え、細い隙間から独房内のダナエへと降り注ぎ、彼女を孕ませます。

『ダナエ』(クリムト作、1907-08年、ヴュルトレ画廊)

その結果、ダナエはペルセウスを産み、神託通り祖父アクリシオスを殺すことになります。

『ダナエ』解説

本作は、ゼウスが光となって通気孔から差し込み、ダナエが思わず腕を伸ばした一瞬を描いています(実はこの絵、リトアニア人の青年にナイフで切り裂かれ、その上硫酸をかけられるという被害にあっており、必死の作業努力によって美術館に復帰はしたものの、光の粒子の描写は現在では損なわれてしまっています)。

すでに光はダナエの裸身を金色に染め始め、腰骨のへこみや下腹部の翳りが生々しい印象を与えます。

『ダナエ』(1637-38年、エルミタージュ美術館所蔵)

身を飾るのはヘアバンドと腕輪だけですが、天蓋付きの重厚なベッドや毛皮の敷物、豪華な寝具、ビロードのテーブル掛け、召使などから彼女が王女という高位にあることがわかります。

ダナエの枕元にはキューピッドがいます。絵の主題が「愛」だと示すために登場することが多く、ここでは矢を射るための両手がきつく縛られ、激しく顔を歪めて泣いています。父王によって訳もわからず閉じ込められ、純潔を強いられているダナエの愛に焦がれる苦しみが縛られたエロスに仮託されています。キューピッドの表情はダナエ自身の声にほかなりません。

参考文献

中野京子 名画の謎

『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』(中野京子)

興味を持った方は是非読んでみて下さい!