はじめに
今回は百人一首のNo.10『これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関』の解説していきます。
『これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関』解説
読み方は?
『これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関』は「これやこのゆくもかへ(え)るもわかれてはしるもしらぬもあふ(おう)かさのせき」と読みます。
逢坂は「おうさか」と読みます。
作者は?
作者は蝉丸。
九世紀後半を生き、盲目の琵琶の名手であったという伝説がありますが、その経歴は未詳。逢坂の関は山城国(京都府)と近江国(滋賀県)の堺の関所で、逢坂の関跡付近には蝉丸を祀った神社があります。
ちなみにですが、百人一首No.62、清少納言の歌『夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂の関はゆるさじ』という歌にも逢坂の関は登場します。
現代語訳・意味は?
『これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関』の意味は以下のようになります。
「これがあの、これから旅立つ人も帰る人も、知っている人も知らない人も、別れては逢うという、逢坂の関なのですよ」
いかがでしょうか。この歌を読むと僕は大学生になったときのことを思い出します。高校生までは良くも悪くも人間関係が密で、一度顔見知りになった人達とはなかなか離れることはありません。それが大学になると知り合ったかと思うといつの間にか会わなくなったり、LINEを持っているけれどもその人の顔を思い出せないなんてこともざらです。ただ、大学生活を経て社会人になるとこのような人間関係がこれからは続くんだと気づきます。細かい人間関係を気にしなくても良い気楽な反面、ちょっとばかり寂しい人生の縮図みたいなものがこの歌にはあると思います。
品詞分解・修辞法は?
①これやこの
これ…代名詞
や…間投助詞
こ…代名詞
の…格助詞
②行くも帰るも
行く…カ行四段活用の連体形
も…係助詞
帰る…ラ行四段活用の連体形
も…係助詞
「行く」と「帰る」が連体形になっているのは、その後に「人」が補えるからですね。
③別れては
別れ…ラ行下二段活用の連用形
て…接続助詞
は…係助詞
④知るも知らぬも
知る…ラ行四段活用の連体形
も…係助詞
知ら…ラ行四段活用
ぬ…打ち消しの助動詞の連体形
も…係助詞
⑤逢坂の関(掛詞)(体言止め)
逢坂の関…固有名詞、「逢坂」の「逢う」の掛詞となっており、さらに体言止めですね。
参考文献
この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。
百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。