百人一首No.62『夜をこめて鳥のそらねははかるとも』解説~意味・現代語訳、品詞分解、背景、掛詞など修辞法、作者

はじめに

今回は百人一首のNo.62『夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂の関はゆるさじ』 を解説していきます。

『夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂の関はゆるさじ』解説

作者は?

作者は枕草子(966?~1072?)。

一条天皇の中宮定子に仕えました。宮中での出来事や随想をつづった『枕草子』の作者です。

彼女の父親である清原元輔や深養父の歌も百人一首のそれぞれNo.42とNo.36に収録されています。

清原元輔
深養父

意味・現代語訳

『夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂の関はゆるさじ』の意味は以下のようになります。

「夜のあけないうちに、鶏の鳴きまねで人を騙そうとしても、あの函谷関ならともかく、この逢坂の関は決して許さないでしょう。だまそうとしても、私は決して逢うことを許さないでしょう。」

背景

宮廷の社交の場で即興で詠まれた歌。

『後拾遺集』の詞書によると夜更けまで話しこんでいた藤原行成が宮中の物忌みがあるからと理由をつけて帰っていきました。

藤原行成

翌朝、「鳥の声にもよほされて」と言ってよこしたので、枕草子は函谷関の故事をふまえて、夜ふけの鳥の声はあの函谷関のそら鳴きのことですね、と返事をしました(戦国時代、斉の国の孟嘗君が、秦に使いして捕らえられたが、部下に鶏の鳴きまねをさせて、一番鳥が鳴かなければ開かない函谷関を夜中に開かせて通り抜け、ブ無事に逃げ帰ることができた。要するに、「鳥のそらね」とは「鶏の鳴きまね」で、嘘だということ)。すると行成は「関は関でもあなたに逢う逢坂の関」とたわむれを言ってきたので、今回の歌を詠んだという訳です。

品詞分解(修辞法)

①夜をこめて

夜…名詞

を…格助詞

こめ…マ行下二段活用の連用形

て…接続助詞

②鳥のそらねは

鳥…名詞

の…格助詞

そらね…名詞

は…係助詞

③はかるとも

はかる…ラ行四段活用の終止形、「だます」の意

とも…接続助詞

④よに逢坂の(掛詞)

よに…副詞、「決して」の意

逢坂の関…固有名詞、「逢坂」と「逢ふ」の掛詞

⑤関はゆるさじ

は…係助詞

ゆるさ…サ行四段活用の未然形

じ…打消し意思の助動詞の終止形

参考文献

この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。

百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。