歌川広重『東海道五十三次 神奈川 台之景』(No.4)を解説〜神奈川宿の旅情

はじめに

今回は歌川広重の『東海道五十三次 神奈川 台之景』(No.4)を解説していきます。

『東海道五十三次 神奈川 台之景』解説

神奈川宿

左手に海を眺める旅路でのどかな風景が広がっています。タイトルにある「台」とは神奈川宿の西の高台で、海の美しさを楽しむため多くの茶店が並べられていました。画面中ほどに見えるのは野毛の岬、左にやや霞んで見えるのは本牧です。なんとも旅情が感じられるではないですか。

茶店

目線を画面右側にしぼってみましょう。のどかな風景から一変。人々の喧騒が聞こえてきそうです。

茶店の女たちと旅人たちのデュエルが繰り広げられています。女の勢いがあまりに強いのか、口をあんぐりと開けている男もいます。

巡礼者

一方で、その下には親子の巡礼者、そして厨子を背負った六部が坂を登っています。どちらも信仰の旅の途中で、上で行われている喧騒とは無縁な存在に見えます。

画面左右における自然と人間の対比、そして画面右の上下における静と動の対比により、広重はこの一枚の中に小宇宙を作り出すことに成功しています。

広重の絵に描かれた風景は今こんな感じらしいです

参考文献

この記事は『謎解き浮世絵叢書 歌川広重 保永堂版 東海道五拾三次』(町田市市立国際版画美術館監修 佐々木守俊解説)を参考にしています。

広重、東海道五十三次に興味ある方は是非。旅をしている気分になれますよ。