歌川広重東海道五拾三次『蒲原 夜之雪』を解説〜これやこの行くも帰るも…

はじめに

今回は歌川広重の東海道五拾三次のNo.16『蒲原 夜之雪』を解説していきます。

さくらエビ漁船のある新蒲原駅

解説

幻想的な雪景色が広がっています。

夜の道を三人の人物があるいています。右の二人組の頭や背中には雪が真っ白に積もっており、観ていると感傷的な気分になってきます。寒さに震えながら、少しずつ少しずつ進んでいる光景が頭の中に浮かんできます。

左側にいる人物は背中を丸め、番傘で顔を隠しています。こちらの人物の背中にも雪が積もっておりやるせない気持ちになります。

孤独な雪道で出会った二組。すれ違う際には何か言葉を交わしたのでしょうか。同じ苦労を分かち合うもの同士、たとえ言葉は交わしていなくともホッとした気持ちにはなったのではないでしょうか。

旅人は出会い、そして別れる。百人一首に収録されている蝉丸の歌にも似た哀愁がこの絵には漂っています。

参考文献

この記事は『謎解き浮世絵叢書 歌川広重 保永堂版 東海道五十三次』(町田市市立国際版画美術館監修 佐々木守俊解説)を参考にしています。

広重、東海道五十三次に興味ある方は是非。旅をしている気分になれますよ。