アングルの『ホメロスの礼賛』を解説〜文学作品を擬人化?

はじめに

今回はルーブル美術館所蔵、ドミニク・アングルの『ホメロス礼賛』について解説していきます。

大英博物館にいるホメロス

参考文献

この記事は『名画で読み解く世界史』を参考にしています。

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『ホメロスの礼賛』解説

『ホメロスの礼賛』解説

ギリシア文明復興の先駆となったホメロスの業績を称えるアングルの作品です。1862年にルーブル宮殿の天井画として注文されました。画面では古代の人々がホメロスを称え、「勝利」と「栄冠」の寓意である天使が月桂冠をホメロスに与えています。

『ホメロス礼賛』(アングル、1827年、ルーブル美術館所蔵)
足元にいるのは彼の作品、『イリアス』と『オデュッセイア』。文学作品を擬人化するという斬新な発想

名だたる面子

この「古代の人々」というのが面白く、画面中には偉人が描かれています。

まず、画面左端にいる赤いターバンの様なものを頭に巻いている人物が『神曲』を著し中世におけるキリスト教の世界観を確立したダンテ。画面右側、赤いノースリーブ(?)を着ている髭もじゃがアテネに蔓延するソフィストを批判し、ギリシャ哲学の祖となったソクラテス。そして、画面右端、黄色の服と被り物をしているのが東方遠征を敢行してギリシャ社会を西アジアへ拡大、双方の文化が融合したヘレニズム文化が造成されるきっかけを作ったアレクサンドロス大王です。

ホメロスとは?

こんな豪華なメンバーに囲まれているホメロスとは何者なのかというと、トロイア戦争を題材にした『イリアス』とオデュッセウスのの冒険の物語『オデュッセイア』の著者なんですね(ちなみに、画面のホメロスの足元にいる緑の人物はオールを持ち『オデュッセイア』を、赤の人物は剣を持ち『イリアス』を表しています)。彼の作った叙事詩がギリシャ神話の基本となり、古代ギリシャ人の行動規範に大きな影響を与えたと言われています。つまり、西洋人のアイデンティティの源流とも言える人物なのです。

『ホメロス』(フィリップ=ローラン・ロラン、1812年、ルーブル美術館)