ブレイクの『巨大なレッド・ドラゴンと日をまとう女』~モンスターのモンスター

はじめに

今回はブルックリン美術館所蔵、ブレイクの『巨大なレッド・ドラゴンと日をまとう女』を解説していきます。

ブルックリン美術館、Wikipediaより引用

ブレイクとは?

ウィリアム・ブレイク(1757~1828)はロンドン生まれのイギリスの画家

『ウィリアム・ブレイク』(トマス・フィリップス、1807年、ナショナル・ポートレート・ギャラリー)

幼少時から異常な幻視を見たことで知られ。変人、狂人と見なされていました。

『アダムとエヴァに見つけられたアベルの身体』(ブレイク、1826年、テート・ブリテン)

彼の作品が世間に評価され始めたのは彼の死後からで、生きている間は他の作家や画家のために挿絵や版画を制作して暮らしいていました。

『蚤の幽霊』(ブレイク、1819~20年、テート・ブリテン)

『巨大なレッド・ドラゴンと日をまとう女』解説

モチーフは?

本作のモチーフは『ヨハネ黙示録』の一場面

日(太陽)をまとう女が12の星をちりばめた冠をかぶり、足を月の上へ載せ、子を産む苦痛に泣き叫んでいました(どんな設定?)。

そこへ七つの頭に七つの冠をかぶり、十の角を持つレッド・ドラゴンが現れます。ドラゴンは尾で星の三分の一をかき集め、地へ投げ落とします。それから女の前に立ち、子供が生まれたら喰ってやろうと待ち構えます。

絵を見てみよう

女の前で仁王立ちをするドラゴン。もう服をはだけて何かをみせている変質者にしか見えません。

『巨大なレッド・ドラゴンと日をまとう女』(ブレイク、1803~05年、ブルックリン美術館)

始めてこの絵を見たときにはドラゴンの頭部にあるものが巨大な目に見えて「カマキリかな?」と思うのですが、そのように見えるのは角。ドラゴンの後頭部なんですね。

このドラゴンの丁寧な描写に比べて女性の方はわりかしてきとうで、妊娠中の腹部はぼかされています。両足の下には三ヶ月が描きこまれています。

解釈

この絵は力の誇示をしたがるナルシズムと狂気を表現していると考えられそうです。一応女性の子供を喰うという設定ではあるのですが、モンスターが自分のモンスターを見せつけて恐れ戦いているさまを楽しんでいるようにしか見えません。

ブレイクが描く裸体はどれも例外なく筋肉に覆われていると言われています。それはミケランジェロを崇拝していたからとされていますが、果たして彼にもそのような欲望があったのでしょうか…

参考文献

この記事は『怖い絵2』(中野京子)を参考にしています。

興味を持った方は是非。