はじめに
今回はドビュッシーのピアノ曲集『版画』を解説していきます。
ピアノ曲集『版画』解説
成立
『版画』はドビュッシーが1903年に作曲したピアノ独奏曲集です。
ドビュッシー本人は否定的だったといわれていますが、その独自の作曲技法から、『版画』は印象主義的なピアノ技法を確立した作品として評価されています。
構成・初演
初演
曲全体はオリエント・スペイン・フランスから題材を取った3曲で構成されており、初演はスペイン人のピアニスト、リカルド・ビニュスによって行われました。
第1曲「塔」
第1曲「塔」ら、インドネシアのバリ島のガムラン音楽を模して作曲したとされ、1オクターブに5つの音が含まれる「5音音階(ペンタトニック)」を用いた主題が変化しながら繰り返されています。
第2曲「グラナダの夕べ」
第2曲「グラナダの夕べ」は、ジプシーの音階(ハンガリー音階)と、ギターのかき鳴らしを真似した演奏によってスペインを描いています。グラナダとはスペイン・アンダルシアの古都です。
第3曲「雨の庭」
第3曲「雨の庭」は、フランスの童謡が引用され、細かいアルペジオによって庭の木々に降り注ぐ雨が表現されます。全音階、半音階、長調、短調が混在しているのが特徴です。
『版画』に関するエピソード
3つの土地を描くピアノ曲を作りながらも、作曲当時、ドビュッシーはフランス以外の二箇所には行ったことがなかったそうです。
第1曲は1889年にパリで行われた万国博覧会で聴いたバリ島民が演奏するガムラン音楽に、第2曲に関してはグラナダのあるアンダルシアからほど遠いマドリード州に数時間滞在したほどだとか。
それでも、スペインの作曲家マヌエル・デ・ファリャは、ドビュッシーがスペイン民謡を使うことなく、細部までスペインを描ききっていると称賛したというエピソードが残っています。才能というのは末恐ろしい…
参考文献
この記事は『366日の西洋音楽』(久保田慶一監修)を参考にしています。
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