ドビュッシー『喜びの島』解説〜成立・背景、構成

はじめに

今回はクロード・ドビュッシーの『喜びの島』を解説していきます。

『喜びの島』解説

成立・背景

『喜びの島』は1904年にクロード・ドビュッシーによって作曲されたピアノ独奏曲です。この曲はルーブル美術館所蔵、ジャン=アントワーヌ・ヴァトーの『シテール島の巡礼』に影響を受けて作曲されたと言われています。

この『シテール島の巡礼』というのは甘美なロココ主義を象徴するような作品で、その官能的な世界観は今なお多くの人を惹きつけて止みません。

シテール島というのはギリシャ群島の中の一つで、ギリシャ神話の女神、アフロディーテ(ヴィーナス)が泡から生まれて最小に辿り着いた島。そこに足を踏み入れる人たちは果たして理性を保っていられるのでしょうか?

ドビュッシーは18歳のときから人妻と関係を持ち、同棲相手が自殺未遂を起こし、結婚後も不倫、妻はコンコルド広場で銃で胸を撃ち自殺するという劇的な恋愛経験を経てきた人物です。この『喜びの島』も、1904年の夏に、逃避行の地であるイギリス海峡のジャージー島で、既に着手していたものに手を加えて、相手であるバルダック婦人の前で完成させたと言われています。

構成

『喜びの島』は、イ長調で4分の4拍子。中世ヨーロッパ教会旋法の一種である、リディア旋法をもとに作られています。装飾音やリズムの変化を用いることで幻想的な愛の喜びを描き出していると言われており、鮮やかな演奏のために高い演奏技巧が要求されます。

初演は1904年にパリの国民音楽協会で、リカルド・ビニュスの演奏で行われました。また、『喜びの島』の管弦楽版は、ドビュッシー自身の指示にもとづいて、イタリアの指揮者、ベルナルディーノ・モリナーリによって編曲されています。

ベルナルディーノ・モリナーリ

参考文献

この記事は『366日の西洋音楽』(久保田慶一監修)を参考にしています。

音楽の知識がなくても気軽に学べる本となっています。興味のある方は是非。