パリスの審判の絵画を解説~ルーベンス、ミュシャ、ルノワール

はじめに

今回はロンドン・ナショナルギャラリー所蔵、ルーベンスの『パリスの審判』について解説していきます。

ロンドン・ナショナルギャラリー
ロンドンの町並みと美術館を一望するアングル。

『パリスの審判』解説

パリスの審判とは?

ことの発端は英雄ぺレウスと海の女神テティスの結婚式。神々がみな祝福に訪れる中、争いの女神エリスだけが招待されませんでした(それはそうでしょう…)。彼女これを恨めしく思い、神々の集まっているところへ「もっとも美しい女神へ」と記された黄金のリンゴを投げ込みます。

すると、自分こそが一番の女神だと思っているゼウスの正妻ヘラ

『ユピテルとユノ』(カラッチ、1597-1604年、ファルネーゼ宮殿)
ゼウスとヘラのことです。左下にいる孔雀がヘラのアトリビュート

知恵と戦争の女神アテナ

『アテナとムーサ達』(ステラ、1640-45年、ルーブル美術館所蔵)
ムーサとは文芸を司る女神のこと。一番右にいるのがアテナです。

美の神アフロディテ

『ヴィーナスの誕生』(ボッティチェリ、1483年頃、ウフィツィ美術館所蔵)

の間で黄金のリンゴを巡る激しい諍いが起こります。

困ったゼウスは三女神の中で誰が一番美しいかをトロヤの王子パリスに判定させることにします。これが「パリスの審判」です。

『パリスの審判』(ルノワール、1908-10年、ひろしま美術館所蔵)
皆さんふくよかですね

三女神はそれぞれ公約を掲げ、自分の得意分野でパリスにアピールします。

ヘラ「私を選んでくれたらヨーロッパとアジアの王にしてあげる」

アテナ「私を選んだらあらゆる戦いで勝てるようにしてあげる」

アフロディテ「私を選んだら世界一の美女と結婚させてあげる」

『パリスの審判』(ミュシャ、1895年、個人蔵)
一方こちらはスレンダー

パリスが選んだのはやっぱり美の女神、アフロディテ。パリスはスパルタ王メネラオスの妃であるヘレネを妻としてしまいます。

『ヘレネとダヴィッドの恋』の一部(ダヴィッド、1788年、ルーブル美術館所蔵)
確かに美しい。ためらいがちなヘレネの表情もGood。

メネラオスは当然激怒。彼はギリシアの王たちに呼びかけ、連合軍を結成。パリスのトロイアを攻め立てます。これが、トロイアの木馬で知られるトロイア戦争です

『トロイアの木馬の行進』(ティエポロ、1760年頃、ロンドン・ナショナルギャラリー)

『パリスの審判』解説

ルーベンスは「パリスの審判」のモチーフを何度も描いています。本作はその中でも、ロンドン・ナショナルギャラリーに所蔵されている一枚。

『パリスの審判』(ルーベンス、1635年、ロンドン・ナショナルギャラリー所蔵)
各々にポーズを取りアピールをする三女神。ヘラ(一番右)のコートが触り心地良さそう。アテナ(左)の盾に移っているのはまさかメデューサ?

画面左に女性が描かれています。皆さんはどの女性がどの女神だか見分けがつきますか?答えは、左からアテナ、アフロディテ、ヘラです。それぞれ、武具、愛の神エロス、孔雀が見分ける目印となっています(と言ってもエロスは左下にいるので消去法で真ん中がアフロディテと考えられます)。

画面右側では腰かけたパリスが黄金のリンゴを差し出しています。パリスは王位や戦いよりも愛と歓楽に重点をおいたためアフロディテを選びました。

ルーベンスの描いた同じテーマの作品

『パリスの審判』(ルーベンス、1597-99年、ロンドン・ナショナルギャラリー所蔵)
神聖な感じです。真ん中にいるのがアフロディテ。主役のポジションですね。
『パリスの審判』(ルーベンス、1638-39年、プラド美術館所蔵)

参考文献

この記事は『名画で読み解くギリシア神話』(吉田敦彦監修)を参考にしています。

美術、ギリシア神話に関する知識をセットで学べるオススメの本です。美術に興味がある方はもちろん、旅行好きの方にも読んでほしい一冊です。