はじめに
今回は与謝蕪村の『夜色桜台図』について解説していきます。
『夜色桜台図』解説
読み方は?
夜色桜台図(やしょくろうだいず)と読みます。
解説
どこまでも暗い夜空の闇が目に印象付けられます。雪を降らす漆黒の空は冷たいものですが、濃淡のある深い黒のむらが闇の深さを強めるとともに、闇夜を暖かく感じさせてくれます。それと対照的に、山や屋根の雪は白く美しく輝き、光が放たれているかと感じるほどです。また、この絵を構成している稜線や家並みの形、それを捉える筆さばきには生気がみなぎり、作者である蕪村の息遣いが伝わってくるかのようです。
この絵が描かれた場所は蕪村が愛した住処ともして、親しく通い続けた料理茶屋がある京都だと言われています。柔らかな起伏の稜線が街まで迫るところから東山を想像することが定説のようです。
本来水墨画では雪の白さは塗り残す紙の白さで表現しますが、この絵では下地として塗られた胡粉(ごふん)という絵の具の白さで表しており、水墨画の画法からははずれる技法です。
画題の詩を絵とともに書く詩書画一体の様式は、中国の文人画の流れを汲むものです。『八種画譜』などの技法書を手本として、やがて日本の風土や自然から感受する心持ちを表現する術を得て、池大雅、与謝蕪村を代表とする「南画」というジャンルが大成されました。
池大雅・与謝蕪村『十便十宜帖』
大雅の伸びやかな表現に対して、蕪村は自由闊達のなかにも細やかな表現が特徴です。その好例として、中国の文人李笠翁が別荘伊園の暮らしの便宜さと四季の変化のすばらしさをうたった詩「十便十宜詩」を主題にした画帖『十便十宜帖』が残されています。
これは注文に応じて暮らしの部分を大雅が、自然についてを蕪村が担当して描き、合作したものです。
参考文献
『日本美術101鑑賞ガイドブック』
この記事は『日本美術101鑑賞ガイドブック』(神林恒道 新関伸也編)を参考にしています。
日本美術に興味あるものの何から読んだらよいか分からない人におススメです。