はじめに
今回は百人一首No.8『わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり』の解説をしていきたいと思います。
『わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり』解説
作者は?
作者は喜撰法師(きせんほうし)。九世紀後半の人です。
六歌仙の一人ではありますが、確実に喜撰の作とされているのは今回紹介する一句のみで、宇治山の僧という以外経歴は未詳です。
意味・現代語訳は?
『わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり』の意味・現代語訳は以下のようになります。
「私の庵は都の東南にあって、このようにのどかに暮らしている。だのに、私がこの世をつらいと思って逃れ住んでいる宇治山だと、世間の人は言っているようだ」
学校とかで一人で時間を過ごしてると「ぼっち」などと言われたりすることなんかあるかもしれませんが、「違うよ、のどかに過ごしてるだけなんだ」と。余裕がある一方で、それでも少し寂しい一句です。
方角は?
庵の方角は東南です。
十二支の方位で、子から北が始まりと、卯が東、午が南という風になっています。
なので「たつみ」というのは「辰」と「巳」なので東南になるわけです。
品詞分解(掛詞・句切れ)は?
①わが庵は
わ…代名詞
が…格助詞
庵…名詞
②都のたつみ
都…名詞
の…格助詞
たつみ…名詞
③しかぞすむ(句切れ)
しか…副詞
ぞ…係助詞
すむ…マ行四段活用の連体形、「ぞ」を受けて連体形になっています。
ここまでで三句切れとなっています。
④世をうぢ山と(掛詞)
世…名詞
を…格助詞
うぢ山…「宇治」と「憂し」の掛詞。宇治山は今は「喜撰山」と呼ばれています。
と…格助詞
⑤人はいふなり
人…名詞
は…係助詞
いふ…ハ行四段活用の終止形
なり…伝聞の助動詞の終止形
参考文献
この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。
百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。