はじめに
今回は百人一首のNo.80『長からむ心も知らず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ』を解説していきます。
『長からむ心も知らず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ』解説
作者は?
この歌の作者は待賢門院掘河(たいけんもんいんのほりかわ)。
十二世紀前半の人で、院政期歌壇の代表的な女流歌人です。
後白河天皇の母である待賢門院に仕え、待賢門院が出家した際には自らも一緒に出家しました。
意味・現代語訳は?
『長からむ心も知らず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ』の意味・現代語訳は以下のようになります。
「末永く変わらないという、あなたのお心もはかりがたく、お逢いして別れた今朝は、黒髪が乱れるように心が乱れて、あれこれともの思いをすることです」
どんなに信頼できる人であっても心は移り変わるもの。逢瀬の最中、その後などはその後の未来を想像して憂鬱になってしまうものです。いづれにせよ深すぎる愛というのは悲劇を予感させますね。
品詞分解(縁語)は?
①長からむ(縁語)
長から…形容詞ク活用の未然形、「長し」は後の「黒髪」の縁語です
む…婉曲の助動詞の連体形
②心も知らず
心…名詞
も…係助詞
知ら…ラ行四段活用の未然形
ず…打ち消しの助動詞の連用形
③黒髪の
黒髪…名詞
の…格助詞
④乱れて今朝は(縁語)
乱れ…ラ行下二段活用の連用形
て…接続助詞
今朝…名詞
「乱れて」も黒髪の縁語です
⑤ものをこそ思へ
もの…名詞
を…格助詞
こそ…係助詞
思へ…ハ行四段活用の已然形 、「こそ」を受けて已然形になっています。
参考文献
この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。
百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。