はじめに
今回は百人一首のNo98『風そよぐならの小川の夕暮れはみそぎぞ夏のしるしなりける』を解説していきます。
『風そよぐならの小川の夕暮れはみそぎぞ夏のしるしなりける』解説
作者は?
この歌の作者は従二位家隆(じゅにいいえたか)(1158〜1237)。藤原家隆です。
俊成(No83)に和歌を学び、百人一首の撰者である定家と並び称されました。
意味は?
『風そよぐならの小川の夕暮れはみそぎぞ夏のしるしなりける』の意味は以下のようになります。
「風がそよそよと楢の葉に吹いている。このならの小川の夕暮れは、秋の訪れを感じさせるが、六月の祓のみそぎだけが、夏であることのしるしなのだった」
「みそぎ」とは河原などで、水によって見を清め、罪や穢れをはらい除くこと。ここでは六月祓(みなづきばらえ)がさされています。六月祓は陰暦六月三十日に行われる神事で、その年の上半期の罪や汚れをはらいきよめます。
品詞分解は?
①風そよぐ
風…名詞
そよぐ…ガ行四段活用の連体形
②ならの小川の
ならの小川…固有名詞
③夕暮れは
夕暮れ…名詞
は…係助詞
④みそぎぞ夏の
みそぎ…名詞
ぞ…係助詞
夏…名詞
の…格助詞
⑤しるしなりける
しるし…名詞
なり…断定の助動詞の連用形
ける…詠嘆の助動詞の連体形、「ぞ」を受けて連体形になっている
修辞法は?
掛詞
「ならの小川」が固有名詞の「ならの小川」と「楢」の掛詞となっています。
本歌取
この歌は、古今六帖の『みそぎするならの小川の川風に折りぞわたる下に絶えじと』と、後拾遺集の『夏山のならの葉そよぐ夕暮れはことしも秋のココチこそすれ』をふまえた、本歌取の歌となっています。
参考文献
この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。
百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。